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不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

イーノ・ハイドがアンビエントじゃなくて、つくづく良かったと思う

なんでしょう、この意味不明なタイトル。イーノ・ハイドというのは、ブライアン・イーノアンダーワールドのカール・ハイドのユニット名なんです。4月末、このアルバムの国内版が先行発売されました。

私にとっては、絶対買うぞ的なアルバムなんです。買って以来、クルマでガンガンに聴きまくってます。すげぇな、両方とも。という気持ちを、ブログにしてもいいのか。いやいや逆にすべきでしょう。このマイナーな喜びを、ちょっとでも広めようよと(笑)

 

イーノもハイドも超有名だし、がっちり熱心なファンがついてるはずなのに、たぶん日本では売れない。日本の音楽状況もあるし、特にアンダーワールドファンは買わないだろうなというサウンドなんだから。

Someday World

 

アンダーワールドのブレイクは、映画『トレインスポッティング

トレインスポッティング』って、ドラッグでイカレた伝説の映画。アンダーワールドの名を一躍世界的にしたのは、この映画で、この曲が使われたから。

 

Underworld - Born Slippy Nuxx (Live @ Zepp Tokyo 2010)

ライヴ用に、かなりもったいつけた構成になってるけど。映画の公開は1996年。そこから10数年、ダンスフロアやテクノシーンには欠かせないトップランナーになった。

私にとっては、高速道路を走るときにはアンダーワールドがマスト、になった。このぐいぐい引っ張っていく、BPMが上がっているみたいな錯覚するサウンド。iPodで聴いてても、音圧感は弱い。やっぱり全身で感じないと。

いやでもアンダーワールドの魅力は、グルーヴ感だけじゃないよね。キレイな音色の上もの、美しいメロディ。

やがてダンスシーンから離れるんだろうなと、あたり前過ぎるほどに予感させるサウンドだった。

映画『こわれゆく世界の中で』のサウンドなんて、共作とはいえ、内省的なサウンドだった。これも傑作だけど。

Primrose Hill 

2007年に出た傑作アルバムOBLIVION with Bellsでも、方向転換の片鱗が窺える。 

この曲が大ヒットして、誰も根本的な変化をいう人はいなかったけど。

Underworld - Crocodile

 

そして私があれ?と思った曲。ずいぶん内省的。BPMを落し、ビートトラックの音量を下げれば、もろアンビエントだ。

Underworld − Beautiful Burnout

Oblivion With Bells

Oblivion With Bells

 

 

そしてついに昨年出たカール・ハイドのソロアルバムは、完全にアンビエント。ああ〜、やっぱりアンビエントだと思って私は買わなかったし、Youtube等で探したりもしなかった。

そもそもアンビエントテクノというジャンルがあるぐらいで、テクノ系アーティストはそこに行きやすい。

ロックミュージシャンでも、成功したり年齢が上がってくると、内省的なサウンドに行きやすい。そんな転向をほとんどのファンは望んでおらず、売れず、結局は元の場所に戻ってくる。

アンビエントと内省的な音がイコールではないけれども。

 

アンビエントって、なに?

アンビエントというジャンルは、ブライアン・イーノが完全にオリジネーターだ。確か「私が神経質過ぎるのか、音のない空間が耐えられない」というようなことがインタビューで語られてたと思う。「Music for Airport」などのアンビエント(環境音楽)作品を続々と創り出していった。

空港だって喧噪があるから、音がないというより、計算されたサウンドのない空間ということだろう。

ただイーノのアンビエントミュージックは、空間を凍りつかせるので、私にはまったく不要だった。

 

イーノはデヴィッド・ボウイのプロデュース以降に知って、ずっと追いかけているのに、アンビエントものだけはまったく無視。

そもそもアンビエントの元は、エリック・サティが提唱した「生活の中に溶け込む音楽」というコンセプトだ。エリック・サティ1920年に『家具の音楽』を作曲した。コンサートの休憩時間に演奏され、パンフレットには「聴き入らないように」と書かれてあったそうだ。聴くことを意識せず、家具のようにただそこにあるだけ。そこにあるだけの家具だって、アンティークかモダンかなどで空気感が違ってくる。そんな意図は画期的だし、この音楽自体が素晴しい。

Youtubeで『家具の音楽』の音楽を検索すると、なぜか家具の音楽ジムノペティで出て来るんだけど、ジムノペティじゃないよね。

家具の音楽が入っているのは、アルバムとしてはこれ。リンク先のAmazonで、家具の音楽の「県知事の私室の壁紙」が少し試聴できるようになっているので、興味があったら聴いてみてください。

サティ:管弦楽作品集(再プレス)

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 私は同じジャケットですけど、LPで持っているので、内容が同じかどうかまではわかりません。

とても意識しないで聴ける音楽とは思えませんが(笑) でも素晴らしいです。

 

サティとアンビエントミュージックをつなぐジョン・ケージ

サティのコンセプトが、そのまま一足飛びに現代のアンビエントミュージックにつながるわけではないでしょう。その間には、ジョン・ケージという大きな存在があります。

ジョン・ケージは今や、なにも演奏しない『4分33秒』がネタにされるぐらいですけど、意図するところは、演奏者が演奏しない。観客のざわめきやカラダを動かして服がこすれる音、靴音、さらには自分自身の心臓の鼓動という、非音楽的な音に囲まれている環境への気づかされる。そんなコンセプト。

ジョン・ケージのこんな志向性に大きな影響を与えたのは、鈴木大拙という宗教哲学者だと言われている。鈴木大拙コロンビア大学で東洋思想の講義を行い、これを受けていたケージが大きな影響を受けたそうだ。確かに『4分33秒』はZENっぽい。

 

ケージはそれだけじゃなく、プリペアードピアノなど前衛的な手法を数多く生みだし、それがアバンギャルドや、ひいてはテクノミュージックに大きな影響を与えてる。

 

ただクールダウンするための音楽なんて、わざわざ買わない 

ここまで長々と書いたことは、音楽に詳しい人なら、誰でも知っていること。でもここから書くことは私の個人的な好みで、なんだそれと言われてしまうかもしれない内容です。

イーノがやっていたアンビエントミュージック。そしてカール・ハイドの内省的な音への志向は、どちらもありがちなものか? ありがちな方向性でのコラボレーションなのか?

 

一般的にアンビエントテクノは、チルアウト。つまりクールダウンするためのものだと言われる。クールダウンさせるなら、ゆっくりしたテンポで、ムーディなシンセを被せれば出来上がる。

どこからがゆっくりで、どこからが速いかって難しいけど、乗らせるには120bpm(ビートパーミニッツ)あたりが適当だと言われたりする。120bpmはジョギングしたぐらいの心拍数と似ている。bpmは、1分間の拍数を示す値。120を境に超えるとアップテンポ、下回るとスローとかバラードと呼ばれるものになる。ちなみに最も速いと言われるドラムンベースで180bpm程度。

一方ジョギングしたぐらいと書いたのは、脂肪燃焼に最適とされる有酸素運動時の1分間の心臓がドックンドックンする回数。公式としては年齢によって違っていて、

40歳なら 目標心拍数=(220-40)×0.6~0.7=108~126

20歳なら120~140  30歳なら114〜133 50歳なら102~119

それより高いと脂肪は燃焼しにくく、運動強度が高いとされる。

bpmと目標心拍数が関係あるなら、落ち着くとかテンションが上がるというベースにテンポがあるということになる。

逆に言えば、要素としてはただそれだけのこと。

感情を揺さぶったり、かきたてたり、もっと深いところに連れて行ったりしてくれる音楽じゃない。イーノがやっているのも、ハイドがやってきたことも、それほど底の浅い音楽じゃないだろう。

イーノのアンビエントは、空間を凍り付かせると私は思ってる。それに対して私が興味ないだけで、ただのBGMじゃないし、コンセプトとは裏腹に意識されない音じゃない。と思う。

 

イーノは、異なる側面を引き出す天才

イーノを語るときに、アンビエント中心になるのは片手落ち。プロデューサーとしてのイーノは、アーティストの今までにない側面を引き出すのに長けている。もしイーノによって引き出されてなかったら、その先はなかったかもと思わせられるものもある。デヴィッド・ボウイのイーのプロデュースものなんて、まさしくそう。

アルバム『Low』は全曲作詞作曲ともにボウイだけど、これほど実験的なサウンドになったのはイーノプロデュースじゃなきゃ考えられない。

David Bowie- The Speed of Life

Low

Low

 

 

U2の場合は、イーノよって美しさを加えられたとしか言い様がない(笑)

コールドプレイのクリスは、イーノのことをこう言ったそうだ。これだけで十分(笑)

彼はダンブルドアみたいなんだ。ハリー・ポッターでは、ダンブルドアはどこに向かっているのか知っていても、言わなかったりするよね。でも、必要になるかもしれないと言って、石や、フクロウの羽をくれる

 THE ESCAPIST から

 

本質的にはジョン・ケージの後継者のような人だとは思うけど、こうやってポピュラーミュージックも大きな影響を与えている。

ダンブルドアみたいという言い方はとても面白いけど、なんでも知っている賢老人というよりは、常に非音楽的な要素を音楽として使う、非アートなものをアートとしようとしているアナーキーなアーティストだと私は思う。

コラボしたアーティストは、それに救われている。迷宮に迷い込んでる人に、光で脱出口を教えているような。

 

Brian Eno & David Byrne "Strange Overtones" 

Everything That Happens Will Happen Today (TODO002)

Everything That Happens Will Happen Today (TODO002)

 

 

ふたりのコラボレーションには、あらゆる対立する要素が溶けている

ところが今回は、もしかするとハイドが救ったのかもしれない。

まずアルバム『Someday World』から先行してYoutube公開された『The Satellites』を聴いて驚いた。パソコンで聴いているので音場の広がりは少ないけど、奇妙な管楽器のフレーズがシンプルなテクノビートに乗っかってる。そしてイーノのボーカル。

管楽器のフレーズは、上に書いたエリックサティのアルバムに入っている『猿の王様のためのファンファーレ』を思い出させたし、テクノビートは初期のシーケンサーの基本的で単純な使い方みたいだ。普通はこんなの、1曲のまとまった曲にならない気がする。なのにそれが、風変わりなポップスとして成立してる。素晴しい。

 

Eno • Hyde - The Satellites

イーノもハイドもボーカリストとしてだけを取っても、不思議な癒し系の声質。そこはこのアルバムでも評価されるべきだと思うけど、それだけじゃない。

ライナーノーツによれば、イーノ自身がこう語っている。

当初私が思い描いていたアルバムは、複雑なポリリズムの反復による長尺のトラックを4つほど収録したものだった。その中で、カールは歌を提案してきた。もともとそれらにはとても不可解で抽象的なサウンドが背景に施されていて、そこには一般的に歌で使用されるような通常の伴奏は1つも無かった。

ああ、やっぱりハイドが歌ものにしたのね。もちろん私たちは出来上がったものしか聴けないけど、こんなことが出来るのは、カール・ハイドとのコラボならではだと思う。

そして、長尺の4曲にならなくて、つくづく良かったと思う(笑) そうなってたら、アンビエントか実験的なアバンギャルドになってるはず。

我々は、凡庸な音楽へと知らぬ間に引きづり込む、滑らかなソフトウェアの斜面を滑り落ちることは避けようとしていた。そこで我々は“反正常化ルール”を取り決めた。(中略)

「音楽を回避する」「田舎の少年のファンクを」「自作の楽器のみを使用する」「冷酷なまでに正直なエネルギー」「立ったまま作業する」「ソーセージが調理されるのを見守る」「人生で同じことは二度と起こらない」「強い感情のみを」「毎日が新しい日」「シェフフィールドの住民を驚かす音楽を創る」といったものだ。

えー、イーノの言ってることは理解できるようで、実際はさっぱり。訳分からない(笑) だけどアルバム『Someday World』を聴けば、異なる要素が多層的に絡み合っていて、それでいて全体としてポップスとして成立していることの不思議さを感じられる。

 

あ、ポップスだと思ってるのは、もしかして私だけですか?(笑)

Someday Worldは、大傑作ですって。