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不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

そもそもハイカルチャーなんて、あったんだろうか

Eテレで去年の8月から10月の頭まで、「ニッポン戦後サブカルチャー史」という番組が計10回放送されていた。 年末から新年にかけても再放送があったみたい。

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NHKのウェブサイトからタイトルを抜粋

NHK|ニッポン戦後サブカルチャー史

  • 第1回「サブカルチャーはいつ始まったか? 戦後〜50年代」
  • 第2回「60年代新宿カルチャー/大島渚は何を撮ったのか? 60年代(1)」
  • 第3回「劇画とナンセンスの時代〜「カムイ伝」と「天才バカボン」〜 60年代(2)」
  • 第4回「深夜ラジオと音楽革命 70年代(1)」
  • 第5回「雑誌ワンダーランド 70年代(2)」
  • 第6回「What's YMO〜テクノとファッションの時代〜 80年代(1)」
  • 第7回「「おいしい生活」って何?〜広告文化と原宿・渋谷物語〜 80年代(2)」
  • 第8回「セカイの変容~岡崎京子エヴァンゲリオン・ゲーム~90年代(1)」
  • 第9回「おたく→オタク→OTAKU 〜オタクカルチャーと秋葉原〜 90年代(2)」
  • 第10回「サブカルチャーはどこから来て どこへ行くのか〜ゼロ年代〜現在」

サブカルチャーが戦後流入したアメリカのカルチャーから始まったとする講師/宮沢章夫さんの説は、とても面白い。

その後もサブカルチャーの中心的舞台として、新宿→原宿・渋谷→秋葉原という変遷での説明も面白かった。

 

私が同時代で経験しているのは、第5回から8回の途中まで。途中というのは、岡崎京子さんは何度か仕事させていただいたぐらいで詳しく知ってるしゲームも知ってる。だけどエヴァンゲリオンからはまったく接点がない。

番組を見ながら、知っている“サブカルチャー”が流行していたとき、いったいメインカルチャーとかハイカルチャーってあったんだろうかと、ふと思った。

 

日本でのハイカルチャーって、どんなもの?

宮沢さんは、ハイカルチャーがあってサブカルチャーがあるとおっしゃる。それはもう言葉としては当たり前なんだけど、ハイカルチャーってなに?

学問、文学、美術、音楽などの中で高い位置づけをされているのが、ハイカルチャーでそれが文化なんだそうだ。つまりはアカデミズムや権力者が認めたものという定義になるということでしょう。

だけど、それがハイカルチャーで=文化なんだろうか。小泉元首相が好きだったX JAPANハイカルチャー? 理化学研究所が出すものは、ハイカルチャー? お役所が推進するクールジャパンは、ハイカルチャー? とするとアニメやコスプレや初音ミクもハイってことになるけど、感覚としてはあくまでサブカルよね。

 

宮沢さんも、あるいは辞書的にもハイカルチャーが存在するという前提でサブカルチャー論が進んでる。日本では、そもそもハイカルチャーなんてものがあったんだろうか。

皇族がやられているもの、とか。皇太子はビオラを演奏されたりするけど、そうするとクラシックの演奏がハイカルチャー? 確かに演奏している人はハイソなイメージがある。

元々文部省由来の二科展は、ハイカルチャー? あんまりハイソなイメージないし、そもそもアート好きな人が二科展を評価しているんだろうか(笑)

 

とか、いろいろ考えても日本のハイカルチャーって、どうにもこれだっていうイメージがない。ヨーロッパだと社交界があるしクリケットってハイソっぽいよねとか、そういうのに相当するものはあるんだろうか。

 

石原元都知事は、サブカルチャーを担ってたんだろうか

サブカルチャーという概念が成立するには、ハイカルチャーが必要なのはよくわかる。でも第1回目に登場する石原慎太郎太陽族みたいなことって、サブカルチャーなんだろうか。

日本が戦争に負けてアメリカ文化が押し寄せ、裕福な家のアメリカナイズされた息子が享楽的に無軌道に遊びまくったって話でしょう? だとしたら、サブでもなんでもないじゃん。日本の文化が破壊されたあとにハイソサエティから出てきた、むしろハイカルチャーに近くないですか。

 

海外でのサブカルチャーって、ハイカルチャーメインカルチャーに対する反抗、カウンターだったりする。hiphopやダンスにしたって、政治的なメッセージだったりする。

だけど石原慎太郎元都知事が昭和30年当時に好きだったのは享楽的なことで、政治的なメッセージなんてどこにもなさそうだ。都知事になってからは、都民が享楽的になるのを許せなかったんだから、「太陽の季節」で書いた世界は、ただの若気のいたりみたいなことで(笑)

 

DCブランドに火をつけたのはマルイ

第6回は、YMOとDCブランド。バブルに向かう、突入する時代のいかにもサブカルチャー的な象徴かもしれない。

コムデギャルソン川久保玲さんは、今でも反逆的だ。Y'sのヤマモトヨウジさんも、いまだにボヘミアンのよう。おふたりは、モード界に「黒の衝撃」を巻き起こした。世界のファッションジャーナリストを、賛否両論でまっぷたつに割るほどの事件だったそう。

日本では当時は作家の田中康夫さんが「作業服にタグ付けただけで、高い値段で売っている」と揶揄したぐらいで。今の政治家田中康夫からは想像もできないほど、ハイソサイエティファッションが好きな人だったのよね(笑)

 

ところが日本では、コムデギャルソンやY'sに象徴されるDCブランドを扱ってくれる店が少なかった。店というかテナントとして、入れてくれる百貨店がなかった。積極的に扱ったのはマルイで、DCブランドのブレイクに大きな役割を担った。

実際のところはマルイはマルイで、当時日本の大手アパレルから、あまり相手にしてもらえなかったので、DCブランドを積極的に取り込んだという側面が強そうだ。若者相手のクレジットの与信と回収にノウハウがあったということで、今なら普通だけど当時の業界的イメージは高くない。

売っているマルイは新興勢力だったけど、サブカルチャー的な存在ではまったくなかった。

 

この時代、DCブランドが席巻するまでは、トラッド的なファッションが主流だったのよね。ただ当時のトラッドを、メインカルチャーどころかカルチャーとして扱えるかどうか。実際のところ、社会人の制服みたいなものだから。そういう時代なのでDCブランドはサブというよりもカウンターカルチャー的な要素が強かったかもしれない。

時はバブル。繁華街ではタクシーがつかまらないような時代にヤマモトヨウジさんは「自分が作るのは、タクシーがつかまらない服」みたいなアンチ金満的な発言をしてた。

その後、普通のスーツまでもパンツをツータックにするなどの影響を与えたけど、ツータックを普及させた元はアルマーニなのよね。そこのところは日本のDCがパクってたわけで。日本的に感じるギャルソン・Y'sにしても、そういうヨーロッパの流れは汲んでるのよね。

 

YMOサブカルチャーだったんだろうか

偶然、友だちに誘われて行った冨田勲TOKYO FMの公開録音番組に、前座としてアルバムデビュー前のYMOが出てきた。ものすごい衝撃だった。その時の印象は「ポップで複雑なクラフトワーク」だった。

細野さんの考えたイエローマジックというネーミング自体、日本とか黄色人種の作るマジカルな音楽ということなんだと思う。ただベースにあるのは、膨大な引用。世界のポピュラーからクラシック、電子音楽に至るまで、YMOの三人は引用センスの天才で、しかも組み合わせて独自の音楽に仕上げる秀才ぞろい。それをテクノポップという形式に仕立て上げた。

これって、とても日本的な方法論。かつての家電とか自動車とか、海外から評価されたメイドインジャパンの方法そのものだ。

YMOYMO周辺からは、さまざまなジャンルのサブカルチャーを作り出したけれども、今でも残っているのは音楽だけでメイドインジャパン的な王道なんじゃないだろうか。これをいつまでもサブカルチャーと呼ぶのはちょっとおかしくて、ハイカルチャーと言ったっていいぐらい。だって今後も、世界で評価される日本発の音楽はYMO的な方法しかなさそうですよ。引用しまくりで、なおかつ日本ならではのフレーバーがまぶされ、新しい形式。そんな感じ。

正統なクラシックとかジャズの世界で評価されるのは、ちょっと違う。そういうのは、カルチャーではないだろうし。

 

かつてサブカルでくくられた漫画家は、エロ漫画誌から出てきた

第8回、90年代で大きく扱われるのは岡崎京子さん。デビューはどこなのか分からないけど、桜沢エリカさんとともにエロ漫画誌から名前が売れるようになった。内田春菊さんも出身がどこなのか知らないけど、エロな作風だ。

それ以前に有名になった漫画家が、大手出版社に10代から囲われて、専属の漫画家として出てくるのとは異質だった。もちろん今でも有名な蛭子さんみたいな人は、ガロで有名になった。ガロという存在自体が特異でサブカルチャー的だけど、今も多くの人が知っているのは蛭子さんだけ。だけど、蛭子さんみたいな漫画は誰も描けない(笑)

岡崎京子桜沢エリカは、その後の漫画家に与えた影響は多大。よね? たぶん。

出版社から独立していて、いわゆる少女マンガ的な目の中に星がキラキラみたいじゃない絵とか、乾いた感じのストーリーなのにエッチところが出てきても当たり前みたいなのは、この人たちが切り開いたと言ってもいいぐらい。安野モヨコさんは、岡崎さんの元アシスタントだし。

 

大手出版社から出た世界的に知られた漫画家たちは、今はクールジャパンに組み込まれるほどだから、メインカルチャーそのもの。メインカルチャーがあるからサブカルチャーもあるけど、漫画ジャンルのサブカルって、いまはなんだろう。

エロ漫画誌どころか同人誌だから、サブのそのまたさらにサブのサブ、ぐらいの位置づけかもしれない。そもそも、それなりに知られたメジャー出版社じゃない媒体というのがないしね。

 

そして趣都・秋葉原の時代になった

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第9回は、90年代の後半から。まさにコミケやコスプレ、フィギュアなどOTAKU文化の時代を扱っている。場所としては、新宿→原宿・渋谷から、趣都・秋葉原の時代へと移ったという流れ。

番組の中では言及されてなかったけど、OTAKUサブカルチャーと言っても、クールジャパン扱いものもあれば、そうじゃないものもいっぱいある。大手の企業が関与しているOTAKU文化って、どれだけあるんだろう。むしろ大手が関与しない関与できないところに、特徴があるんじゃないかと思う。

コミケだってそうだし、作家たちが直接売る。アイドルだってAKBグループ以外は、メジャーじゃないことにファンは燃えるんじゃないか。ネットの普及だけじゃなくて、大きなシェアを持つ店とか流通やメディアがないってことが、趣都に突入した時代じゃないのかなって思う。

サブじゃなくて、サブサブサブカルチャーみたいな文化。

これからはますますメインカルチャーなんてなくなるし、ましてやハイカルチャーなんて存在しない。ハイカルチャーがあったとしても、ハイソサイエティ以外には誰にも影響を及ぼさない。あえて言うならクラスタで、いいんじゃないの。

なんかアナーキーっぽいけど、個人的にはほとんど経済原理で動かない文化っていいと思う。

 

NHK ニッポン戦後サブカルチャー史