不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

下落する地価にあらがうんじゃなくて、どうする? という時代

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三浦展さん編著の『地価下落時代に資産を守る!』を読みました。

三浦さんが資産防衛本だなんてと思いながら手に取ると、三浦さんとの対談で東急の都市開発事業部長が「郊外ニュータウンの今後をどうするべきか」を、旭化成ホームズ二世帯住宅研究所の所長が「二世帯住宅によって活力ある家族と地域をつくる」、リノベーション会社の常務が「中古住宅をリノベーションで価値向上」、賃貸マンション経営者が「オーダーメイド賃貸で幸せ想像」なんてことを語ってる。こんな新しい動きをまとまって読める本は、まあないだろう。もちろんネットでも、そう簡単には出てこない。

 


最初に登場する東大教授で建築家の『都市の仕組みをどうかえるべきか』の内容は、諸問題を解決できそうじゃない。こんな方法があるんだと興奮してしまう。
東急電鉄事業部長が「住まうということに純化し過ぎることは、これからの郊外としては厳しくなってくるので、」と発言されているのは、卓見だと思う。

地価下落時代に資産を守る! (ベスト新書)


地価は下落するしかないんだろうか

この本のテーマとしては、地価という以前に縮小する日本。それはなにより人口減少だし、生産人口の減少、高齢化の進行ということがベースにある。だから新しいものを造る、床面積を増やす、総取っ替えするということではなくて、いまあるものをどう活用するか、価値を上げていくかという視点が核にあるように思う。

私は感心して読んでたんだけど、いやいやそんなことはない。縮小することへの対応ではなく、まだまだ拡大していけばいいという人も少なからずいるでしょう。まあ状況からすれば、政府の方針は拡大志向であるのは間違いないだろう。

 

株価、時価総額が経済の勢いをあらわすなら、地価はどうなるんだろう。本書では地価下落時代と当たり前のこととして書かれているけれども。バブル崩壊以降、下がり続けていた公示地価も2006年から3年間は上昇し、2009年からまた下がり続けていますが、昨年2014年は2.48%上昇しています。東京オリンピックが決まったからだ。アベノミクスの成果だと考えることもできますが、どうなんでしょう。

 

私がこのところ、敏感だよなと思いながら見ていたのは虎ノ門エリアのコインパーキングの料金。昨年真ん中ぐらいまでは、10分600円とかいう三度見してしまうような金額も見かけました。ところが最近では同じところが15分400円と表示していて、ヘーと思って。それでもバカ高なんですけど、10分600円というのは渋谷や赤坂の中心部でも見たことがあります。クルマで都心に出かけることは、まずないのに、虎ノ門エリアの異常な乱高下を見てからチェックしてしまうようになった。

いったい何があったかというと、虎ノ門ヒルズの開業が去年の6月。工事車両やらいろんな関係車両が来ていたのでしょう。都知事はあの一帯を日本のシャンデリゼにすると発言していますし、このあとも東京オリンピックに向けて再開発は続きます。だけど、その後は?


2007年に『不動産は値下がりする!』と予言したリクルート創業者

2007年といえば、先に書いたようにバブル以降下がり続けていた公示地価が、上昇に転じた真ん中の年です。リクルート創業者、江副さんが『不動産は値下がりする!』という本を出したので、いったい何ごと?と読みました。江副さんといえば、あのリクルート事件ディベロッパーであるリクルートコスモスの上場前、未公開株を政治家や役人に譲渡したとして逮捕されたあの人です。

本が出版された翌年2008年には、公示地価が10%以上上昇。出版当初も翌年も、関連業界からは鼻で笑われたかもしれない。
書かれていた理由は、供給過剰と金利の上昇という予測。
ざっくり書くと供給過剰は、容積率の緩和による爆発的な床面積の増加。埋め立て地の拡大。政府や地方自治体による公的供給など。少なくとも首都圏の住宅供給数は完全に過剰というもの。
金利の上昇は、当時長期固定金利住宅ローンで取得コストがバブル期に比べ1/3になった。住宅ローン証券化され、サブプライムと同じことが起こり、地価を押し上げている。またこれほどの低金利はなく、放置するなら国債が暴落するから上げざるをえないだろうという。

 

なんかこれ、今の状況に似てません? 住宅ローン金利が下がっても、借りる人が増えないというところは違うけど。

不動産は値下がりする!―「見極める目」が求められる時代 (中公新書ラクレ)


じゃあタワーマンションバブルは何?

そのへんのバブルに関しては前にも書いたので、そちらを読んでみてください。

エリートが買うのは資産形成だし、中国人富裕層が買うのは投資かもしれないし、中国よりはマシとか海外で個人所有できる不動産は買えるだけ買っとけという判断かもしれない。
いずれにしろ需要があるから値上がりする。その需要はいつまで続くかのかという問題。永遠じゃないなら、資産価値、価格として考えるならババ抜きでしかないし。

首都直下型地震が来れば暴落するし、テロがあっても下落しそう。


私なんかは住宅を資産価値優先で考えるのは、けっこう違和感がある。この本は『地価下落時代に資産を守る!』というタイトルだけど、価格という視点はほとんど出てこない。三浦さんは、序章でシェアハウスのことばかり語ってます。シェアハウスには四つの価値があると。第一に個性的。第二に経済的。第三にコミュニケーションが楽しい。第四にセキュリティだと。
三浦さんは『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』という著書があるぐらいで、所有ではなくシェアこそがこれからの価値観だという人だろう。あまり、資産うんぬんという視点はないはずだ。

 

需要と供給の関係から、収益還元法へ。そして、その先へ

いままで家賃だろうが土地の価格だろうが、取引事例からこんなもんですねぇという相場が形成されてた。需要があれば高くなる。供給が上回れば安くなる。先に書いた虎ノ門エリアのコインパーキングの値段は、まさにそんなところだ。だけど、その発想のままで行くと、開発してくれ、新幹線を通してくれ、駅を作ってくれという昔ながらの手法にしかならないし、官製相場が続く。
問題はそんなことをいつまで続けられるかということで、虎ノ門ヒルズは森ビルが造った。周辺の開発はオリンピックに向けて都が金を出すと。で、オリンピックの後は? 

バブル崩壊以降、不動産業界では収益還元法という価格評価の手法が拡大してきたという。その建物や部屋から、どれだけの収益を得られるかということをベースに決められる価格。良さそうだけど、本当にいいんだろうか。


一般人がクルマを所有することを、収益還元法で考えるとあり得ない。クルマの価格、税金、ガソリン代、駐車場代、維持費などなどが掛かるのに、誰かに貸し出したり、売ったりしても、マイナスになるしかないだろう。タクシーやレンタカーやシェアリングと比較しても、取得費用や維持費が下回るような価格設定でクルマを造れるとは思えないし。
だけど、マニアックな人は高くて古いヴィンテージカーを買ったりするし、マイルドヤンキーは改造車に何百万もつぎ込んだりする。今のお金の使われ方って、なんだってそうなんじゃないだろうか。アイドルのCDを何枚も買う。泊まり込みでフェスに行く。機能的に日本ではオーバースペックなダウンを買う。アンチエイジングに大金を使う。資産とか収益とか、そんなことは関係のない自己満足な価値観。

いやいや住むということ、不動産を取得するというレベルはまったく違うから。
そんな声が聞こえてきそうだけど。でも一般的な消費に近づいてるから、住むために買う人が少なくなってるんじゃないだろうか。私はこの変化って、下落するとかしないとかってレベルじゃないと思うんですけど。

『地価下落時代に資産を守る!』、私にはそんな風に読めました。

 

地価下落時代に資産を守る! (ベスト新書)