不透明なチカラですが、なにか?

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『督促OL 修行日記』はヘラヘラ読んでも、真面目に読んでも面白い

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仕事である大手の、といってもハッキリ出すわけにいかないから百貨店みたいなところとしておくけど、その中でも大規模な店の店長に取材をしたことがある。

その人は、新卒で入って最初に配属されたのは取り立ての部署だったそうだ。どういう内容だったのかを聞いていると、その企業のイメージとはかなり違った。もしかして店長になる人は、みんな取り立てを経験しているのかと思ってお聞きすると、そうらしい。ふと、新卒でこの会社を志望している多くの人たちは、そんなこと知らないんじゃないのと思った。もちろん、選考が進めばどこかの段階では知らせるのだと思うけど。

 

 

Amazon『督促OL 修行日記』

 

この本に書かれているのは、新卒で督促の電話をかける強制収容所みたいな部署に配属されてしまったOLの話だ。取り立てに比べればまだ楽なんだろうけど、だけどお客様の罵詈雑言に多くの同僚が心を病み、辞めていく。どうして、お客様に喜んでもらえない仕事をしなきゃいけないんだと。

 

『督促OL 修行日記』は、とても面白い。著者が自分の出来なさ加減やドSな上司を面白おかしく書いてるからというのもあるけど、しょせん他人事だしね。知らない世界のことだし他人事だと思いながら読んでいても、キッツイなぁとかヒデェなぁとか、時々どうしたって巻き込まれそうになるところが出てくる。

そこのところ、解説を書かれている佐藤優さんと同感で、「組織論としても人間論としても優れている」なぁと思う。著者が辞めずに督促の仕事をしていたのは「怖い上司に辞めたいと言えないほどコミュニケーション能力が劣っていた」からだということだけど、それでも怯えて終わりじゃなくて、弱者の戦い方を模索するところは、頭が下がる。というよりも、見習わなきゃと思う。

 

弱者という言葉を自分のことに使う人はキライだけど、この本に登場する督促の電話をかけられて激怒する客たちの中には、きっと本質的な弱者は少ない。ほとんどがだらしない人で、後ろめたさに怒ってるだけだ。

だけどそもそもだらしない人にクレジットカードを使わせたり、キャッシングさせたりすることがいいことなのかどうか。経済は先取りで動いてるんだから、貸せない人を増やしてしまうのもあまりいいことではないけど、それでもなぁ。難しいところだけど、銀行だって信販会社だってサラ金だって、返してくれない人に督促したり取り立てたりしてるから成り立ってる。

そういう部門を、いわばヨゴレ部署としてないもののように扱ったり、ほとんどを派遣にしたり、あるいは外注化したりしているのは、根性が悪いし、まったく知らないで涼しい顔をしている人たちもタチが悪い。

 

金融系に限らず、だらしない人とかガードのユルい人たちにつけ込んで金儲けしているのは、私はどうかと思う。ビジネスですから儲けることは当然でしょうと涼しい顔で言う人たちは、いやらしいことをしているんだと自覚が全くない。ただ人間的に大きな欠陥を抱えているだけだ。鈍すぎる。少なくとも生きるために、いやらしいことをしていてスミマセンみたいなニュアンスは欲しいよね。この本の著者のように傷ついたり、悩むのが当たり前の人間だ。

 

督促OLは、そういう鈍い人たちにただ使われているだけじゃなく、理不尽な客に傷つけられて終わりじゃなく、もがいていることを、こういう風に文書にして、本にして、楽しませながら客観視しようというところも素晴らしいです。

簡単に返さない人たちの人間模様がわかると、つい共感しちゃうところもいい。人間だもの(笑)

督促OL 修行日記 (文春文庫)

督促OL 修行日記 (文春文庫)

 

 

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