不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

日本最大のマクドナルド原宿表参道店が閉店するのは、不人気のせいじゃない

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年末のYahoo!ニュースに「日本最大の店舗 マクドナルド原宿表参道店が閉店へ」というのが出て、ビックリした。

あそこって、日本最大ってだけじゃなく、旗艦店で実験店なんじゃないの。ウェンディーズじゃあるまいし、どれだけ赤字になったって、日本から撤退でもするつもりじゃないと閉めないんじゃないの。それぐらいの資本力あるでしょ、と思ってた。

元記事はFashionsnap.com。「近年は原宿~表参道におけるファストフード店の撤退が相次いでいる」「日本マクドナルドホールディングスは、日本人デザイナーを起用した和テイストの店舗を立ち上げるなど新機軸を打ち出す一方で、ファミリー層を中心とする深刻な客離れと業績低迷が続いていることから、都市部を中心に多くの不採算店舗を閉鎖している」と書いてた。
底浅っ(笑) そんなの誰でも知ってるって。

 

 

そう感じながらも、そんなの賃料だよ。賃料がバカ高の原宿表参道エリアの中でも、表参道沿いで、原宿駅徒歩3分・メトロ明治神宮前駅徒歩1分だから、とんでもない金払ってるんじゃないのと思ってた。

 


閉店した再上陸ウェンディーズ表参道店と比較すると


2年前に「ウェンディーズ表参道閉店にみる、東京のいびつさ」を書いてから、それなりに裏付け取ってからにしようと反省した。なんたって、いまだにけっこうなアクセスがあるぐらいなので、ちょっとビビった(笑)


以前に賃料を調べてみたら、なんとこれがネット上にあった。2011年6月のチラシみたいなので、ウェンディーズが再上陸する前だ。

B1と1階で約99坪、賃料は3,180,000円/月。ということは坪約32,000円。おいおい、想像よりかなり安いじゃないの。
保証金が3,516万で、消却が15%。でもB1と1階それぞれの賃料と保証金になってたから、図面をよく見ると、上下階の移動が外階段しかない。確かウェンディーズはレジ横に階段を作ってたから厨房はもちろん、けっこうな工事をしたわけね。
メトロ表参道駅徒歩3分/明治神宮前駅徒歩5分。表通りじゃないから、それなりに賃料が安いのは当然だとしても、けっこうな投資と月々の賃料を支払ったんだろう。

 

マクドナルド原宿表参道店の物件も、去年の10月30日に次の募集が出てる。アルテカプラザ原宿は1階がソフトバンクで、マクドナルドは2階3階。
2階3階で約241坪、賃料は6,618,700円/月。で坪約27,500円。え、安っ。この立地でウェンディーズより安いって、どういうこと??? 近くにある2階の物件は、坪88,663円で出てるのに。

まあまあ、これが現在マクドナルドと同条件とは限らないけど。それにしても、あり得ない賃料だわ。坪8万円台が相場な気がする。なにか事情があるはず。

 

考えられるのは路面店ではなく、入り方に難がある。マクドナルドのように知名度があり、ロゴ一発で伝わる存在感がないと難しそう。しかも、2階3階の一括貸しというハードルの高さ。

条件に合うのは超有名企業ぐらいだろうから、実際に不人気物件なのかもしれない。それにしても安すぎるけど。

 

もしこの金額程度で借りてるんだったら、なおさらだ。マクドナルド原宿表参道店は、かなりイメージ良く、内装も工夫してるけど、ウェンディーズのように高いレストラン並みのゆったりさはない。メージはともかく、ファストフード的な詰め込み方だ。
それが平日の昼間、外から見る限り、いつも混んでいる。なのに、採算取れないなんてことある? 

 

高い賃料であることは間違いないけど、でも賃料が決定的な要因じゃなさそうだ。

 

 

ファストフードに客が求めているのは、まったりした時間

こんなことを書いてるけど、私がマクドナルドに行くのは、せいぜい年に1、2回ぐらい。原宿表参道店は、取引先に行くのに、15分20分ほど時間が早い。という時。

いい季節なら、そのへんをブラブラして、へーこんな店が出来たんだとか見て回るけど、こげるような夏、手のかじかむ真冬はそうもいかない。どこかに入って時間つぶそうとしても、おっさんが「ただ見てるだけ」ですむような店は、このあたりにない。
だからマクドナルドに入る。そして飲み物だけ飲んで、すぐ出てくる。

だけど私みたいな客は、まずいない。私が入ったときにいた客は、出るときにもみんないる。


グループやカップルも、そしておひとりさまも、みんなまったり喋ってたり、スマホタブレットをいじって長居してる感じだ。
最近行ったときも、カウンター席に座った。カウンター席も2席ほどしか空いてなくて、となりは女性ひとり。反対側はカップルだった。仮に600円程度のセットをふたつ、カップルが注文してたら、どれぐらいの時間なら採算割れしないだろうか。マクドナルドの食材だけの原価率は、他社より安そうだけど。

調べてみたら、その認識は間違ってた。

 

実際は粗利が10%を切る日本のマクドナルド 

2015年の有価証券報告書によると材料費、労務費、その他賃料などの合計、総原価は96.1%だという。ビックリだ。
マクドナルドの「原価」を調べてみた。

しかも材料費、労務費、その他も年々上昇してる。食材は破棄したり円安のせい? 人を雇うのになかなか集まらないから募集費が増えてる? で、賃料も? とにかく年々粗利率が悪化してる。ともかくすべての原価が上がってる。

そうなると超薄利多売でやるしかない。

 

それがダメだったってことは、きっと混んでるように見えるのは長居してるだけで、回転率が低いってことじゃない?


最近、丸亀製麺とかはなまるとか、うどんのチェーンが東京でも増えてるけど、考えてみれば、うどんやそばは日本のファストフード。しかも丸亀製麺やはなまるのようなスタイルだと、ほとんどの客は食べたらすぐ出て行く。
いや、それでも20代だと、まったりしてるな。ひとりでも、スマホいじってる。食べるだけじゃなくて、ほかのことでも使う場所として店に入る。

 

もうそういう時代。だからデリバリーやコンビニの弁当やおにぎりが伸びるんじゃないかと。都心で、ファストフードが成立するには、テイクアウトを伸ばすしかないんじゃないの。お弁当屋スタイルとかね。
ハンバーガーチェーン的業態は、高いグルメバーガーにしない限りオワコンかな。


旗艦店を必要とする店と、必要としない店

ウェンディーズ表参道店閉店にみる〜」で書いた通り、多店舗展開をするために、表参道に旗艦店を出して行列が出来たりして名をあげ、郊外や地方の駅ビル、モールや箱を持っているところと有利に交渉を進めたい店が多いのだと思う。あ、もちろんフランチャイズもね。
でもマクドナルドは、そもそも知名度をあげる必要ないし、現在は全国的に店を減らしてるんだから。

それにファストフードだって、その場所だから成り立つ飲食というケースが増えている気がする。オフィス街と繁華街、都心と郊外みたいな分類じゃなくて、駅ごとエリアごとの特性みたいなことで。コンビニだって家電量販店だって、チェーンってだけで、品揃えはかなり変えてるでしょう。どこでも白もの家電メインのヤマダ電機は厳しいし。訪日中国人だって、爆買する街は決まってる。表参道の高級ブランドも中国人観光客メインだというけど、数を大量に買うわけじゃない。ブランドものを爆買するのは、郊外のアウトレットだ。
鳴り物入りで登場したサードウェーブコーヒーだって、どこででも成立するわけじゃない。むしろ店舗数を制限して、希少性で売るしかないんじゃないという気がする。どこでも同じ味で、同じ快適な空間を提供しますよなんて、たぶん無理だ。

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それでもアメリカがキャッシュを欲しがる理由

あちこちで報道されてるけど、日本マクドナルドホールディングス株の50%は、アメリカのマクドナルドが持っている。この株式を売却し、もしかしたら経営権を握る33%を売却する可能性もあるという。そうなったとしたら、アメリカは日本のマクドナルドの経営から手を引くってことだけど、前原田社長が悪いとか、カサノバ社長が悪いとかばっかりで、あんまりその理由は語られていない。

想像なのでいい加減な話かもしれないけど、確実そうなのは、日本でこの先、マクドナルドが伸びる余地はないと判断しているのではということがある。
そしてもうひとつは、マクドナルドが世界的にリストラをしようとしてるんじゃないかと。だからキャッシュが欲しい。


アメリカでオーガニックが流行ってるといっても、そんな指向の人はグルメバーガーだろうが、ハンバーガーやピザを食べない。ビーガン用のメニューを出してるところもあるというけど、たぶん大チェーンを信用したりはしない気がする。過去にこんなことも書いてます。
『ヒップな生活革命って、なんだろう』

 

2015年は、こんな報道もありました。ビル&メリンダ・ゲイツ財団がファストフードに見切りをつけたようだと。
ゲイツ財団、マックとコーラにさよなら 保有株を売却

WALL STREET JOURNALは、売却の理由については書いてないですけど、社会的な世間体みたいなものがあるにせよ、要は今売れば儲かる、あるいは損しない。だけど、この先保有してても損する。という判断でしょう。

マクドナルドは、この先投資する価値がない? うーんどうなんでしょう。
世界最大の外食チェーン・マクドナルドの成長余地について、各国の店舗数と人口を比較し、今後どれだけ出店余地があり、どの程度売上を増加出来るか計算したサイトがあります。
世界各国のマクドナルド店舗数から見た成長余地

これによると、ざっくり先進国は増加の余地がゼロ。中国やインドはいくらでもあって、新興国は全般的に、けっこう出せるよという内容。
アメリカやカナダは、人口10万人あたりで4店舗以上ある。日本でも3店舗近くある。増加余地は、ゼロ。
中国は10万人あたりで、0.06店舗しかない。現在は、1000万人で6店舗ってことですね。で、増加余地は、38,412店舗。
インドは10万人あたりで、まだ0.02店舗しかない。増加余地は、34,089店舗。
アメリカと日本とカナダのマクドナルドを足しても、18,467店舗。いっそぜんぶ潰して撤退しても、中国とインドに出せばカバーできるどころか、今の4倍ぐらいに増やせるって考えますよね
単純にいえばそういうことで、リストラの費用を必要としてるんだと、私は思ったりします。

多種多様な競合店の多さを考慮せず、人口だけで考えても増やす余地がないなら、効率を良くするためには、値上げかコストダウンしかない。でもそれを両方やってきて悪評しかないですから、急激に衰退するしかない。


ってことは、どんどん日本から、まったりできる場所がなくなって行くのかも。マクドナルドに限らず。商品単価が安く、客単価も回転率と良くないところから順にね。

スタバが減り始めたら、けっこうヤバイかも。飽和状態だけど、あの価格帯でも無理だってことですから。

 

今日のBGM-404【 Vitalic - Stamina 】

 

『ビッグの終焉』ニコ・メレ著