[シン・ゴジラ]観てる途中でぞわっと震えが来た
テレビでシン・ゴジラは、野村萬斎さんがモーションピクチャーを付け、演じた動きをCG化したと説明してて驚いた。下半身は重心を上下させず動くんだろうな。ああー、そういえば日本で作られたゴジラはそうかも。面白いじゃないの。
近所の防災部署勤務の公務員は、上司から「防災時の発想に役立つから観るべきだ」と言われたそうだ。だけど、フィクションがリアルな防災に役立つかよ。と思いながら、でも俄然興味が出てきた。
子どものころに、ゴジラを観た記憶って、それほどない。庵野監督のことは、エバさえ観てないけど、前に書いたけど安野モヨコさんの『監督不行き届き』と、テレビ東京でやっていたドラマ『アオイホノオ』で知って、ふつふつと興味は持ってた。
そんなこんなで、シン・ゴジラはなんか観なきゃと思いはじめた。映画館に行く? そうだよ、早く観たいわとなぜだか思ってしまった。スターウォーズさえBODで観たというのに。
観てる途中でちょっと震えが来た。最初のうち、退色させたような色調と登場したゴジラの姿に、なんだよ。映画館まで来ることなかったじゃんと後悔しはじめてたのに、いろんなことが変化して来て、あ、もしかして監督が意図したことは!? と感じた瞬間、ホントに震えた。
いやいや、これは日本映画史に残る大傑作でしょ。ゴジラで、お約束を何にも使わず、こんな人間の会話メインの構成で、これだけ楽しませてくれるなんて。もう一回観たいわ。と、これが見終わった感想。詰め込まれている情報量が、ハンパない。
高橋洋一さんが官邸の会議は、7割方リアルだとかなんとか書いてたけど、たぶんそうなんだろう。
できるだけネタバレしないように、たぶんあまり人が書いていなさそうな、私が感じたリアルさを書いてみる。(ネタバレしてますけどね)
石原さとみさん演じるアメリカ大統領特使のリアルさ
石原さとみさんは、確か日系の政治家役。出てきて喋りだして、その印象にいるいるいる!と笑いそうになった。さすがに政治家は知らないけど、アメリカの政府機関で働く日本人女性の象徴的なイメージを彷彿とさせる役作りだ。
押し出しが強い。身振り手振り喋り方が、日本人的ではない。胸の開いたファッション。若干ビッチ的な雰囲気も漂わせている。石原さとみさんよりは、むちっとしているけれども、あんな感じだ。
有事にアメリカ大統領が、そんな日系の政治家を特使に選ぶかどうかはわからないけれども、日本をルーツに持つ人を派遣した方が、キツイ要求も受け入れさせやすいという設定なんだろうか。
ともかく政治家や官僚たちがメインで出て来るんだから、古い、ベタベタの日本的なやり取りの中に、日本人の顔をしているんだけれども、存在感自体が異物を放り込むときの、庵野監督の人物像の追求に、スゴいわと感心しきり。
多摩川の土手に展開する自衛隊の戦車群
戦闘ヘリや戦闘機はどこの基地からでも、飛んで来れるだろう。でも戦車を出すなら、どこだ? この戦闘方法がリアルじゃないかどうかは分からないけど、多摩川の、二子玉川あたりの土手なら、確かに可能だと思った。
富士の演習場から、戦車を運搬車両に乗せて、東名高速を走ってくる。用賀で高速を降りて多摩川の土手に展開する。場所的にはもっと上流でも下流でも広さはあるだろうけど、高速インターからでいえば、あのへんがもっとも適切に思える。
しかも武蔵小杉の超高層マンション群を背にして立つゴジラに対して、多摩川を渡らせるなと攻撃する自衛隊の作戦も、なんかリアル。二度と東京23区内に侵入させるなというのが、象徴的だ。
上陸地点も、突破以降のルートもかなりリアルに感じた。最初に上陸するのがあそこなら、次は東か西しかないけど、東だと最終地点に近過ぎるし、絵になるところがない。という事情もあるんだろうけど。
怪獣映画としてなら豊洲方面から上陸するのが、お約束のような設定に思える。だけど、豊洲新市場の問題や2020年東京オリンピックの開発を見ても、現在もこれからも破壊されるエリアだ。ゴジラまで破壊しに来る意味がない。
とまあ、二点書いたけど、あらゆるところでリアルなんだろうなと思わせる設定になっている。
ゴジラというフィクションの物語に対して、観客が対ゴジラへの戦いに勝手に妄想を重ね合わせて、興奮することができる。庵野監督は、そのために周囲をリアリティでこれでもかと埋め尽くしたのかもしれない。
観終わってみれば、野村萬斎さんの動きとか防災に役立つかとか、そんなことはまったく忘れて、興奮してた。どうでもよくなってた。
そんな経験も、初めてだわ。