不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

『年収は「住むところ」で決まる』という本の妥当性

イノベーション都市」の高卒者は、「旧来型製造業都市」の大卒者より稼いでいる!? 新しい仕事はどこで生まれているか?「ものづくり」大国にとっての不都合な真実

という本。

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書いてあることが、妥当かどうか。そりゃもう妥当でしょう。そんなこと長々と検証しなくたって、分かるでしょうよ。

でも、だから何? 年収が高くて、長生きして、離婚しないのが、そんなにいいことなの? と私なんかは思う。

 

 

どういう人に囲まれて生きるかによって健康状態が左右される

 

1994~98年アメリカ有数の社会実験「ムービング・トゥ・オポチュニティ」が政府によって行われたそうです。

数都市の公営住宅に住む人たちに家賃クーポンを渡し、同じ市内の比較的困窮度の軽い地域の民間住宅に引っ越すように促した。比較のため対照となる世帯も無作為に選び、10年後に訪問調査した。

10年後の健康状態は、どうだったか。所得の比較的高い地区に移った人の方がずっと良好だったという。

引っ越したあと、食生活を改善し、よく運動するようになり、肥満、糖尿病、抑鬱に悩まされている人の割合も格段に小さかった。

そんなこと社会実験しなくても、ざっくりなら分かりそうだけど。極端にいえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でスポーツ年鑑をビフに奪われた未来と、マーティが取り戻した未来の違いみたいなもの。誰にだって、想像がつく。

ただそれが、地域の所得が高いか低いかとという問題なんだろうか。

栄養面で好ましい食生活を実践しやすいかどうかも、地域の社会的・経済的状況によって大きく違ってくる。低所得者の多い地域にはファストフード店が多く、さまざまな所得層の人が住んでいる地域に比べて、新鮮な食材が手に入りにくい。

ちょっとちょっと、 ファストフードが多いなんて東京だとどの駅前だって、そうよね。

さらに「さまざまな所得層の人が住んでいる地域に比べて」と書いていることからも分かるように、問題なのは都市化とその過度の集積化じゃないだろうか。

人口密集地には、飲食だけじゃなく商業施設が需要以上に集中し、過当競争で低価格店、つまり大量仕入れが可能なチェーン店が勝ち残っていく。チェーン店は継続的に、さらなるコストの低減を目指す。当然、先進国よりも、ヤバい国から、ヤバい企業からの仕入れへと移行する。その結果どうなるか… というのが、少なくとも今の日本で起こっていること。

 

経済学の本として、あるいは都市論の本として、所得をこれだけクローズアップしているしているのは、大きな欠陥に思える。

じゃあ、どういう地域に住む人の年収が高くなるというんだろうか。

 

イノベーション産業の呼び込みに成功した都市と見放された都市

 

要するにイノベーション産業によって発展した都市が、収入の高い都市という。IT産業の世界的中心となったシリコンバレー、ハリウッド、バイオテクノロジーのサンディエゴ、航空宇宙産業の南カリフォルニア

まあ、そりゃあ、ね。

1971年、エコノミスト誌はシアトルを「絶望の町」と書いた。そこに70年代末にマイクロソフトが移転してくる。

マイクロソフト元社員たちの起業・投資によって、ハイテク企業を数多く誕生させた。インターネットの黎明期、アマゾンの創業をマイクロソフトが直接助けたわけではないが、アマゾンは豊富に優秀なエンジニアのいるシアトルに本社を置くことで、優れた商用サイトを作ることができたし、ベンチャーキャピタリスとからの資金調達が可能になったという。

マイクロソフトが移転してきたとき、スターバックスは三店舗しかないコーヒーチェーンだったが、シアトルの発展とともに拡大した。とは書いていないだろうけど、そういう意味だろう。

イノベーション産業が成長した都市は、高給の良質で雇用の増殖を起こす。弁護士、医師、住宅の修理人etc

 

説得力はあるけど、この先アマゾンが移転しないかどうか。すでにアマゾンは優秀なエンジニアが豊富にいるエリアであることよりも、有利な税制である州を選ぶはず。

読んでいて、著者は「すでに終わっている」ことしか書いていないなと思った。マイクロソフトがこの先、発展するだろうか。

 

またリチャード・フロリダの『クリエイティブ・クラスの世紀』を読んでいる人には、敵視の仕方が面白い。

クリエイティブ・クラスの世紀

クリエイティブ・クラスの世紀

 

 そりゃまあゲイのいっぱいいる都市がリベラルで優れているというような見方は、けっこう笑えるけど。それでもリチャード・フロリダは、あるべき未来として書いている。

 

「『年収は「住むところ」で決まる』は、たぶん国会議員や中央官庁が喜ぶ本だろう。

最初に書いているように、この本では「年収が高くて、長生きして、離婚しない」ことが素晴しいという価値観が前提になっているように思える。年収の稼ぎ方、長生きの質、結婚している状況の関係にはなにも触れていない。

リチャード・フロリダを批判するのはいいけど、世界的なIT企業のトップは、かなりの割合でゲイなんだけど(笑)