何年も売り飛ばせない『万祝』というコミックの魅力
マンガはとても好きだけど、だからって雑誌で読んだりしないし、単行本でカバーを見て、これは良さそうだと読み始める。だいたいは、マニアックなものだと思うけど、気に入ったからってそのままコレクションしてたりしない。
本は年に最低二回は、BOOKOFFに売りに行く。そうしないと家が大変なことになってしまうからだけど、コミックだって例外じゃない。整理しながら、う〜う〜んどうだろうなぁ惜しいようなぁと思いながら、『バガボンド』だってその都度売り飛ばしてる。
ところがなぜかこの『万祝』は、売りに行くことができない。年に一度は読み返してるかな。
今回も三連休だし、なんかフラストレーションが溜まってるから、『万祝』を行ってみた。で、けっこうスッキリした。
すべてがシンプルな爽快感と、疾走する溢れる生命感
『万祝』とは、漁師が大漁を祝う晴れ着らしい。それだけじゃなくて、コトバンクなどには「意外な大漁の際に、漁業主が漁夫・知人・関係者を 招いて開く祝宴」だと書いてある。
『万祝』というタイトルだけで、かなり魅力的だ。
アマゾンの商品の説明は、こうなってる。
15歳の少女のクソ刺激的な日々……
高鳴る冒険心……未知なる世界……
すべて海から始まった!!「強く……強くなってね!」
亡き母親の言葉を文字通りとらえ、強さを求め続ける15歳の女子高生・フナコちゃん。
彼女を連れ去った海賊ども、フナコん家にいる謎の下宿人・カトー、フナコを敵視する鴨林……。
フナコを取り巻く数本の流れが、金色の大海になる海洋冒険ロマン!!
かなりムチャクチャな説明だ(笑)
主人公フナコは、格闘技部の暫定部長。そう書くと格闘シーンが凝り凝りかと思われそうだけど、そんなことはない。血湧き肉踊る臨場感のある格闘シーンなんて出てこない。
フナコの繰り出す技は、超が付くほどシンプルだ。飛び後ろ蹴り、左ハイキックなど誰にでも理解できるシンプルな技が、バシッと決まる。格闘技オタクが喜ぶような場面はないです。
伝説の海賊バンクを探す旅は波瀾万丈なのに、心理描写にページを費やすなんていうことはない。登場人物たちのキャラクターはとてもわかりやすく、ぐじぐじした葛藤もない。だからってキャラクターの心の動きが分からないかというと、そんなことはぜんぜんなくて、単純明快に生き生きと伝わってくる。
この旅は、すべてが祝宴。そんな脳天気な描き方は、日本の物語には珍しい。モチーフは、とても日本的なのにね。
真正面か、真横か。ななめのないカバー
『万祝』のカバーは、どれも顔が真正面か真横。日本の絵画とか写真で肖像を扱うときにに、こういう構図はめずらしい。イラストなら少なくないけど。
11巻のすべてがこうなんだから、作者の望月峯太郎さんは、間違いなく意図してやってる。
ストーリーも、たぶんそう。意図して、すっきりくっきりに作ってるから、細かいところを気にせず、疾走感が伝わってくる。それだけならアメコミっぽいけど、アメコミのようなバカっぽい単純さじゃなくて、登場人物のすべてにキャラクターがあって、生命感がある。
10巻11巻で、終わらせ方が混乱しているように思うけど、『万祝』はそんな稀有な存在なのよね。だから売り飛ばせないんだわ。
というか、これ↓ マーケットプレイスでセットで348円だって。そりゃあ売らないわ(笑)
万祝(まいわい) コミックセット (ヤングマガジンコミックス) [マーケットプレイスセット]
- 作者: 望月峯太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/08/05
- メディア: コミック
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