不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

非オタこそ『アオイホノオ』を見るべきだわ

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HDレコーダーの整理をしていたら、去年の夏に終わったはずのドラマ『リバースエッジ』のフォルダにまだ見ていない録画があると出ている。『リバースエッジ』をやってたテレビ東京の金曜深夜のドラマ枠を、半年以上録画し続けてたみたいだ。

この枠は面白いのがけっこうある。消す前に一応、チェックしとこうと思って『アオイホノオ』というドラマを見始めたら、これがもう面白くて面白くて。

 


舞台は、大阪芸術大学の映像学科。そこの漫画家になりたいとかアニメーターになりたいという、学生たちが繰り広げるドラマだ。
詳しいストーリーは、テレビ東京のサイトを見てもらうとして、このドラマの登場人物たちがスゴい! 
といっても、私は庵野秀明さんしか知らないけど(笑) このドラマはフィクションですと強調しながら、実際はかなり実話がベースなんだろうと思う。

テレビ東京の番組サイト
『アオイホノオ』

どうして実話じゃんと思ったかというと

私はエヴァンゲリオンガンダムも見たことがないし、興味がないという珍しい人だ。

マンガはけっこう好きだけど、ドラマの中で主人公モユルが「こんな丁寧な絵は無駄」「アニメにもならない」と切って捨てた大友克洋さん。私は大友克洋さんのファンだ。

エヴァンゲリオンは見たことないけど、なぜ庵野秀明さんを知っているかというと、安野モヨコさんのファンで、庵野さんはダンナ。

どんな人か詳しく知ったのは『監督不行届』で、このマンガもめちゃめちゃ面白い。『監督不行届』に出てくる夫・庵野さんと、『アオイホノオ』の学生・庵野さんはかなりオーバーラップする。こういう学生が、こうなるのかとか、変わってないんじゃんと感じるのも、また面白いところ。


私が大学生の時に作ったサークルというか団体の顧問は、故小松左京さんになってもらってた。一緒に始めたメンバーの中に、ダイコンというSF大会小松左京さんと顔見知りになったオタクがいて、じゃあ顧問になってもらおうということで、大阪朝日放送横のプラザホテルの中にある事務所まで出かけお願いした。


こいつが就職したのはアスキーで、見事にデブって、ずっとオタク街道まっしぐら。私がダイコンを知ったのは、こいつが熱く語ってたからだ。ちょっと時系列が定かじゃないけど、その何度目かのダイコンのオープニングアニメがスゴいんだよと熱弁してたのは記憶に残ってる。
アオイホノオ』を見ながら、おおおー、これがあの学生が作ったオープニングアニメかと、ひとり興奮して見てた。

あれ ダイコンって正式名称なんだっけと検索してみたら、日本SF大会だった(笑) SFは大好きだったので、それで記憶してるんだ。

とにかくそれまで小説中心のダイコンが、庵野さんたち学生が作ったアニメによって、アニメにシフトして行くきっかけになったらしい。

 

こいつが就職したのはアスキーで、見事にデブって、ずっとオタク街道まっしぐら。私がダイコンを知ったのは、こいつが熱く語ってたから。ちょっと時系列が定かじゃないけど、その何度目かのダイコンのオープニングアニメがスゴいんだよと熱弁してたのは記憶に残ってる。
アオイホノオ』を見ながら、おおおー、これがあの学生が作ったオープニングアニメかと、ひとり興奮して見てた。
あれ ダイコンって正式名称なんだっけと検索してみたら、日本SF大会だった(笑) SFは大好きだったので、それで記憶してるんだ。

とにかくそれまで小説中心のダイコンが、庵野さんたち学生が作ったアニメによって、アニメにシフトして行くきっかけになったらしい。


神はディテールに宿るという価値観と、ウケることの両立

主人公モユルは、大友克洋の丁寧過ぎる絵は無駄と言い、高橋留美子のようにパパッと描けて、なんとなく個性を感じられる絵が理想だとする。学校の課題でも学生たちにウケるかどうかを最も気にする。
ところが女の子たちにマンガのことを熱く語るときは、なぜ素晴らしいのか細部の説明ばかりになる。どのへんが細部なのかは人によって違うけど、少なくともドラマの中に出てくる女の子たちには、到底伝わらない細かさだ。もちろん、私もさっぱり分からない(笑)

一方、ライバル庵野秀明やその仲間たちは、ディテールにこだわりまくりだ。私には分からないところが多いけど、ショックを受けて倒れるときに巨大なウルトラマンが倒れるように動きをするところは爆笑ものだ。や、現実の学生・庵野がそんなことをしていたかどうかは不明だけど。
とにかく庵野秀明とその仲間たちは、異常な集中力と並外れたこだわりで、効率とかを考えていない人たちのように描かれている。たぶん庵野さんは、そうなんだろう。ドラマの中ではダイコンのアニメを作成しているとき、風呂にも入らず、お菓子を食べながら手を動かしている様子が描かれているんだけど、『監督不行届』でも似たようなシーンが出てくる。
きっと異常な集中力と並外れたこだわりだけじゃなく、描くことが嬉しくてしょうがないんだろうけど、でもそれだけで満足しているわけじゃない。自分の作った作品がウケるかどうかを、とても気にしているのだ。


きっと異常な集中力と並外れたこだわりだけじゃなく、描くことが嬉しくてしょうがないんだろうけど、でもそれだけで満足しているわけじゃない。自分の作った作品がウケるかどうかを、とても気にしているのだ。

庵野さんは間違いなく天才なんだろうけど、天才じゃなくたって、そしてアニメだけじゃなくたって、ものを作る職業なら誰にでも必要な素養なんじゃないだろうか。

オタクといえばオタクという言葉だけですまされちゃうけど、そんなことないんじゃない。

膨大な情報なんて持たなくたって、今はネット上になんでもあるという考え方が強いけど、頭の中にある情報量の多さと、データベースを使うのとは根本的に消化のされ方が違う。発想するとか創作する元になる消化のされ方が違うと私は思う。

さらにモユルの根拠の希薄な自信。思い込み。これだって、とても必要だ。独りよがりで終わるかどうか。独りよがりにならないための修正は、ウケるかどうか。そしてこの時代なら、賞かも。

 

動かす側に回るという選択 

のちにガイナックスの社長になる、庵野たちの仲間、山賀の存在も面白い。絵が描けないだけじゃなく、手塚治虫さえも知らないマヌケ。しかも庵野たちをつかまえておけば「一生食いっぱぐれない気がする!」とニヤつき、社会性に欠ける仲間たちを動かせることを自分の武器とする学生として描かれている。もちろん、コミカルに。

現実の山賀さんがどういう人だったのかを知る術もないし、たいがい作る人の中に、作らないでただ動かそうとするだけの人がいたら嫌われる。原作者はそのへんを誇張して、面白おかしく描いたんだろう。
のちにガイナックスを一緒に作ったんだったら、動かそうと企む人だけなわけがない。

 

とても面白いんだけど、今の時代は「こいつらをつかまえていたら、食いっぱぐれない」発想が多すぎる気がする。

アニメの世界でも、たぶん中国に出せば10分の1のコストですむとか、そんな発想が多いだろう。直接的じゃなくても、クラウドソーシングのプラットフォームを作って、作る奴らを引きつけとく仕組みを作れば「食いっぱぐれない」とか。

作るジャンルじゃなくても、ひとつの会社の中でも働かせる仕組みを作っとけば「食いっぱぐれない」と考える人たち。動かすだけ側に回ろうという人たちが、多すぎる気がする。

 

でもドラマの中の山賀さんでさえ、作る人たちの習性をキチンと把握している人として描かれている。それに山賀さんのようなプロデューサーは、チームにひとり居ればいい。社会性に欠ける人たちだって、プロデューサーを何人も必要としてるわけじゃない。

 

爆笑しながらも、『アオイホノオ』は現代社会への批評でもあるよなぁと、私は見たんだけど。

アオイホノオ Blu-ray BOX(5枚組)

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