不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

アーミテージがそんなに影響力持ってるって、いったい何者なんだ?

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8月19日、山本太郎議員が「今回の安保法案は、第3次アーミテージ・ナイ・レポートの完コピだ!」と詰め寄ったという特別委員会での質問。これが国内はもとより海外でも報道されていないというツイートがありました。
え、そうなの? 第3次アーミテージ・ナイ・レポートのまんまじゃんなんてことは、私も去年に気づいてた。

 

2015.8.19① 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会

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画像:山本太郎議員のサイトから


いやだって、私が第3次アーミテージ・ナイ・レポートを詳しく知ったのは海上自衛隊幹部学校のコラムから。自衛隊の研究材料として、堂々と書いてるよ。
私は去年の7月にこれを書いた。
ややこしい「集団的自衛権」の論点を整理してみる


安倍内閣の安保法制がほぼ第3次アーミテージ・ナイ・レポートのまんまだなんて、山本太郎議員の質問以前に多くの人が言ってる。

田原総一郎さんも今年の6月11日に公開してる。
日本は一流国か二流国かを問うた「アーミテージ・ナイレポート」


投資顧問会社だって、今年の7月31日にこう書いてる。「安倍政権の政策はすべてこのレポートをなぞっているだけですが、株式市場ではこの政策にそった銘柄の上昇が際立っています」という言い回しだから笑える。値上がり銘柄は、レポートから調べろってことですよね。
東京電力が連日高値、アーミテージ・ナイ・レポート通りの展開へ

そんなの周知の事実でしょう。
なのに新聞やテレビなどのマスメディアは沈黙? 国内ならそれも理解できるけど、海外も沈黙するほどのタブーなのか? 
そこも大きな疑問だけど、どうしてアーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国務次官補(現ハーバード大学教授)はそんなに影響力があるんだろう。ふたりのパワーが、世界のメディアを黙らせたり、日本に丸呑みさせたりするの?
とりあえず検索して調べてみた。というか、検索以外で調べられないし(笑)

 


ところが裏付けがしっかりしてそうなサイトが少ない。事実と憶測が入り交じったようなサイトの方が多い。まだアーミテージ元国務副長官の情報は確実そうなものが多いので、こちらをを中心に調べてみました。


リチャード・アーミテージは、ベトナム戦争の英雄?

アーミテージは映画「ランボー」のモデルらしいと言われてるけど、はっきりしない。Wikipediaによると、こう書かれている。

リチャード・アーミテージ

 

1967年アナポリス海軍兵学校を卒業後(海軍少尉)、ベトナム戦争に志願して従軍。(中略)いったんワシントンに戻ったが、1975年4月に北ベトナム軍がサイゴンに迫ると、国防省から特定南ベトナム人の救出作戦の実行を頼まれる。ビエンホア空軍基地にヘリコプターで乗り込み、機密保持のため基地内の機器を破壊。そして取り残された南ベトナム空軍の将兵30名とともに砲火の中から脱出。その後南ベトナム海軍艦艇と将兵及びその家族を率いて、8日かけてフィリピンまで脱出した(本人談)。


本人談以外には出てこなさそうだ。


リチャード・アーミテージは、武器商人?

政治評論家森田実さんのサイトには、こうあります。

平和・自立・調和の日本をつくるために【353】
2014年4月5日

いまの安倍体制のもとでの真の中心はアメリカ政府の中の国務、国防両省の日本担当者たちです。彼らは武器商人の性格をもっています。アーミテージ氏やナイ氏が安倍首相の背後で安倍政権を操っています。
 戦前の昭和大政翼賛体制の頂点にいたのが天皇でした。しかし2014年の日本の安倍首相を中心とする平成版大政翼賛会の真のリーダーは、アーミテージ、ナイ氏らのアメリカの対日政策担当者です。馴れらはもはやアメリカ政府の中枢にいないのに、中心のように振る舞っています。日本の政治家もマスコミも、いまだに彼らがアメリカ政府の主流にいるかのように思い込んでしまっています。

 

 

武器商人とか軍需産業の代理人という言い方や軍需産業の役員だったという説は、けっこうあるのですが、根拠が書かれていません。唯一見つけられたのは、元関西学院大学教授 宮武嶺さんのブログ。

野田民主党政権、安倍自民党政権を動かすアーミテージ・ナイレポートとは何か。

このアーミテージ氏らの主宰するCSISは表向きは民間のシンクタンクで、政府や軍需産業のための調査・研究をするコンサルタント会社ですが、実際には、政権交代で政府を出た高級官僚が次の政権交代で復活するまでの間準備をしたり、ロビー活動をして政府の外から影響力を行使するための場所となっており、日本経済新聞などがしょっちゅうシンポジウムを共催しています。

 その典型的な例がアーミテージ氏で、国務副長官の職を離れた後も、CSISを通じ、オバマと大統領選を争ったマケイン候補のための戦略を立てたり、アーミテージ・ナイ報告を3度も公表して、その度に日本政府に影響を与えたりと非常に積極的な政治活動をしています。

 ちなみに、Right Webという軍事マフィアによる米国政府への影響力を監視する団体によれば、CSISレーガン政権時代に作られ、「米国は世界の警察官であるべき」という信念の元に、各種メディアを通じて米国内外に多大な影響力を持つネオコン新保守主義の急進派)のフロント組織とされています。

 

政権交代で政府を出た高級官僚が次の政権交代で復活するまでの間」の居場所が民間のシンクタンクという言い方は、数多くあります。

日本でなら、天下り先。日本の官僚は天下り先を点々として、行政へのコネクションを使いながら退職金を何度ももらうと言われますが、官僚に戻ることはありません。アメリカでは、政権が代わると基本的に総入れ替えされるので、民間のシンクタンクで仕事しながら復帰を狙うというものです。

重要なのは、この記事では特定の軍需産業ではなく、Right Webという団体が調べたところ、ネオコンのフロントだと書かれているところ。Right Webを調べたのですが、他にこの団体に言及している日本のサイトはないようです。
Right Web

一般的にネオコンというときは新保守主義を指すはずですが、その中の急進派の先頭に立つのがCSISだとすれば、単純に対外政策強硬路線派ぐらいの意味になるでしょう。もし「ブッシュ政権でイラク戦争を強硬に推進した勢力」を指すのであれば、軍産複合体ということになるかもしれません。

 


CSISは、日本に対してどれほどの影響力を持っているのか

森田実さんは「日本の政治家もマスコミも、いまだに彼らがアメリカ政府の主流にいるかのように思い込んでしまっています」と書いています。いや、そんなバカなと思いませんか? アメリカ政府内に役職を持たない人を、主流だと思い込むなんて、どう考えてもヘン。
宮武嶺さんのブログでは「日本経済新聞などがしょっちゅうシンポジウムを共催」と書かれていたので、とりあえず、このへんから調べてみました。

すると日経は、「日経・CSISバーチャル・シンクタンク」というのを立ち上げていました。日本経済新聞社 代表取締役会長 喜多恒雄氏とCSIS所長・CEOのジョン・ハムレ氏が共同代表に就いています。

 

また日経新聞社は、一般向けのシンポジウムだけではなく、慶応大学『アーミテージ&キャンベル 白熱討論』や上智大学で『アーミテージ&ナイ 白熱討論』を行っています。


慶応大学での主宰者は、竹中平蔵/慶応大学グローバルセキュリティ研究所所長
2013年10月30日
アジア新世代 ~ 問われる日米の絆

この様子はUSTREAMで見ることができます。

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http://www.ustream.tv/recorded/40319615

 

2014年10月31日 上智大学
アジア新秩序と日米の未来〜

 

日経新聞社を窓口に、日本の大学に入り込んでいるということですね。

もっともUSTREAMを見ると、むしろ日経新聞社が呼び込んでいるように思えます。
USTREAMを見ていると、アーミテージ氏は極めて冷静沈着で、討論自体も有意義に思えます。しかしモデレーターである日経新聞の編集委員の方が集団的自衛権のことを「アーミテージさんに暴漢が殴り掛かっても、私は何もすることができないんです。せめて足ぐらい持ってやめろと言いたいんですが、できない。憲法に後ろ手を縛られてるわけですね」みたいなことをおっしゃる。これって安倍総理が安保法制で「ケンカの強い麻生くん」というたとえを使われたのと、ほぼ同じ論法で笑えました。


周辺事態のことと、ペルシャ湾まで出かけて行くこと。地球の裏側まで行くかもしれないことを、友だちがいのないヤツとして矮小化しているところが、とても気になります。


アーミテージ氏は「あくまで日本が決めることだけれども、アメリカ人は日本が集団的自衛権を行使できないことを理解できないだろう」と語っています。現在の共和党大統領選最有力候補トランプ氏の言い方とまったく同じですが、これも沖縄をはじめ、アメリカが日本に多くの基地を持ち、横田空域という1都8県にまたがる広大なエリアを独占していることを知らないからじゃないかと思います。実質的に米軍の支配下にある国に対して、米軍を守らないのはおかしいいうと論法は成立するのでしょうか。
矮小化して言って見れば、毎月みかじめ料を払っている飲み屋が、暴力団から「抗争になったから、お前も武器もって駆けつけろ」と言われているようなものです。

 

たぶん事前のアンケートでは50代以上の60数パーセントが「普通の国になるために、安保法制に賛成」で、学生たちは「主要国としての責務を果たすために賛成」でした。私は占領されているのに、普通の国も、主要国もあったもんじゃないと思います。
たぶんこのへんがアーミテージ&ナイレポートの上手なところで、第三次レポートは、“日本が「一流国家」であり続けるのか、それとも「二流国家」に甘んじるのか”という問いかけから始まります。


占領されてる一流国なんて、ないと思いますが(笑) 日本人が何て言えば乗ってくるか、うまいところを煽っています。

 


日本の政治家に対する影響力の強さは?


板垣英憲さんという、元海上自衛隊幹部候補生学校から毎日新聞社記者を経て現在評論家の方がこう書かれています。
2014年03月01日
米国のアーミテージ元国務副長官が、険悪な安倍晋三首相とオバマ大統領の仲を取り持とうと名乗り

 

アーミテージ元国務副長官が、日本の保守政界のなかでも、とくに自民党派閥「清和会」(安倍晋三首相の祖父・岸信介元首相=米CIAから資金提供=から派閥を受け継いだ福田赳夫元首相が設立、父の安倍晋太郎外相も会長を務めた)との関係が深く、日本の政治に大きな影響力を及ぼしてきた一人であったからである。
ところが、民主党オバマ大統領は、日本よりは中国重視の軍事外交政策を行っており、共和党色の強い「ジャパン・ハンドラーズ」を重用しなくなっている。従来の米国政権が、軍事力をバックとする「ハード・パワー」を重視してきたのを改めて、外交力を発揮する「ソフト・パワー」「スマート・パワー」重視の国際戦略に大転換したことから、「ハード・パワー」重視の「ジャパン・ハンドラーズ」を遠ざけてきたのである。


これもあちこちで言われていることで、アメリカ従属で台湾寄りの清和会系。対して反米親中の田中派系と。


どこまで本当かは分かりませんが、田中角栄元首相が、アメリカの承諾を得ずに日中国交回復をしたり、オイル・ショック後、オイルメジャーを通さずアラブ諸国から直接買い付けようとする独自の石油資源外交を展開していたことは周知の事実でしょう。
また東京地検特捜部が関与して失脚した政治家は、ことごとく田中派-経世会系ということだけは、間違いないようです。
ななしの方が書かれています。

2010年01月18日
経世会(旧田中派)VS清和会(地検・CIA)


これらが本当だとすれば安倍総理は、そもそもアメリカの影響が強く、アーミテージ氏を頼っているのかもしれません。
2013年、安倍総理オバマ大統領と会見するため訪れたワシントンで、CSISで講演を行っています。
首相官邸のHPで動画を見ることができます。


そのほか小泉純一郎元総理は次男の小泉進次郎氏を、渡部恒三民主党顧問は長男をCSISに送り込んでいます。渡部恒三民主党顧問は元経世会ですが、アメリカの意に反する行動をして失脚させられた仲間たちを見て、転向したということでしょうか。

Wikipediaには、こう書かれています。

日本人では小泉進次郎や、浜田和幸渡部恒雄などが一時籍を置いた。現在では日本から多くの将来有望な若手官僚や政治家(候補含む)がCSISに出向して学んでくる慣習が確立している。CSISの日本部には、防衛省公安調査庁内閣官房内閣情報調査室の職員の他、ジェトロや損保会社、NTTの職員も、客員研究員として名を連ねている。また、日本の現役政治家とも縁が深く、麻生太郎安倍晋三なども度々CSISを訪れ、講演でスピーチを行っている。

 

対米全権大使を務めた外務審議官の娘が、CSIS、そして「アーミテージ・インターナショナル」で働いていたと書いている、本人のブログもあります。
加藤 和世
VIEWS 2010年秋号(第23号)掲載
「わかっちゃいるけど、やめられない」

 

小泉純一郎元総理は郵政民営化がアメリカの年次改革要望書によるものだと言われていましたが、1979年の大蔵政務次官就任当時より郵政事業の民営化を訴えて以降、ずっと言い続けていたようですので、これはアメリカ従属ではないでしょう。


小泉元総理の従米判断といえば、イラク戦争です。

2003年イラクがテロ組織を支援し、大量破壊兵器を保有していることを理由にアメリカ、イギリスが国連決議なしにイラクを攻撃。小泉元総理はアメリカ支持を表明。イラク特措法を作り、自衛隊を派遣した。

 


国際協調、国連決議よりも、日米同盟を機軸にした外交へとシフト

2003年3月20日
首相官邸 小泉総理大臣記者会見
イラク問題に関する対応について

 

日本政府はこれまでもイラクに対しても、また、アメリカ、イギリス、フランス等に対しましても、平和的解決が最も望ましい、そういう努力を最後まで続けるべきだと訴えてまいりました。しかしながら、事ここに至って、残念ながらイラクはこの間、国連の決議を無視というか、軽視というか、愚弄してきました。十分な誠意ある対応をしてこなかったと思います。私はこの際、そういう思いから米国の武力行使開始を理解し、支持いたします。 

とアメリカ支持を表明。

9.11を受け

今後、危険な大量破壊兵器が、危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危険な目に遭うか、それはアメリカ国民だけではありません。日本も人ごとではありません。危険な兵器を危険な独裁者に渡したら、我々は大きな危険に直面するということをすべての人々が今感じていると思います。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事であります。 

今回ブッシュ大統領いわく、これはイラク武装解除を求めるものであり、イラク国民に対する攻撃ではないと。イラク国民に自由を与える、将来豊かな生活を築き上げるような作戦だと言っております。私もそうだと思います。日本としても、この米国ブッシュ大統領の方針を支持してまいります。
 日本が今日まで戦後発展してきた基本方針の最も重要なことは、日米同盟関係と国際協調体制、これを堅持していくということだと思います。日本は、あの第二次世界大戦の敗戦を大きく反省して、二度と国際社会から孤立してはならない。そういうことから、国際協調体制を図りながら、日本の発展を図っていくと。同時に日本の安全を確保するためには、アメリカと同盟を結んで、日本一国だけでは日本の防衛は不十分であると。日本の安全確保はできないということから、アメリカと安保条約を締結して、日米同盟関係を堅持することによって日本の安全を確保してまいりました。今後も日本国民の安全と、そして日本の繁栄・発展を図る上で、国際協調体制を堅持していくことに変わりありません。

 

 

記者からは「少なくとも国連を中心とした国際社会の理解と支持は得られていない面があると思いますが、この段階でアメリカの攻撃を明確に理解し、支持するということは、今後日本は国際協調、国際連合よりも日米同盟を機軸に外交を展開していくという基本戦略の転換ということなのかどうか」と質問され、小泉総理はこう答えている。

基本政策の転換ではありません。最初に発言しましたように、日米同盟と国際協調、これは両立できるんだと。日本の安全を確保する上において、日米同盟は不可欠であります。同時に、日本の発展を考える際にも国際協調は不可欠であります。

 

両立という言葉は便利だけれども、実質的に国際協調は無視し、アメリカ支持であることは間違いない。

質疑応答よりも先にこう述べられています。

 

日米同盟関係の強固な信頼の下に、日本はこれまで日本国民の安全を図り経済の発展を図ってまいりました。これからも一時的に全世界のイラクの問題に対する協調体制が取れなかったとしても、将来私は必ず多くの国が世界の平和と安定と繁栄のために国際協調の必要性を痛感すると思います。日本はそのために日米同盟の重要性と国際協調の重要性、この両立を図っていくという方針に今後も変わりありません

 


しかし、その結果、大量破壊兵器はなかった。このイラク戦争の総括は日本ではない。

もっとも小泉元首相の判断について、こんな本がある。アーミテージ氏が登場する。
検証・小泉政権とイラク戦争 -毎日新聞朝刊

竹内行夫外務事務次官は、親日派として知られる米国務省ナンバー2、アーミテージ副長官にこう注文していた。
「予防先制攻撃や自衛権を根拠とする武力行使を、日本が支持することは難しい。あくまで678、687といった国連安保理決議の枠内でなければ困る。決断の正当性は過去の安保理決議に求めてほしい」
 日米戦略対話は、一昨年6月の日米首脳会談で設置が決まった事務レベルの安保政策定期協議だ。8月の協議で、竹内、アーミテージ両氏はこんな会話も交わした。
 ア氏「日本の国益とはいったい何だ。腹を割って話してくれ」
 竹内氏「大量破壊兵器(の拡散阻止)だ。国際社会の結束が大事だ。確かな結束のために、証拠を示してほしい」
 ア氏「いい話だ。ブッシュ大統領とパウエル国務長官に伝える」
 イラク大量破壊兵器を開発・保有している証拠を示し、国際社会を結束させる――。竹内氏の注文を、米側は後に「タケウチ・クライテリア(criteria=規準)」という符丁で呼ぶようになった。

 

イラク問題への日本の対応が複雑化した背景に、小泉首相の訪朝があった。小泉政権は米国にも無断で首相の訪朝合意をまとめた。初めて聞かされた米政府要人はアーミテージ氏だった。米側も驚いたが、騒然となったのは、むしろ日本の外務省だった。ブッシュ政権の反発が予想以上に強かったのだ。
 小泉首相から訪朝計画を打ち明けられたアーミテージ氏は、即座に「北朝鮮は核開発を進めている」と極秘情報を明かした。同じころ、ワシントンでは、ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官が加藤良三駐米大使にこう伝えていた。「北朝鮮は(核兵器に直結する)ウラン濃縮プログラムを開発しています」

 

1月30日昼、竹内外務次官ら数人の外務省幹部が首相官邸を訪ねた。竹内氏は「米国が求めているのは戦費ではありません。国際的な支持です」と言った。「米国が軍事行動を始めたら支持すると言って下さい。それで日本政府の仕事の8割は終わります」と言う出席者もいた。小泉首相は大きく息を吸い込んで天を仰いだまま、言質を与えなかった。

 

 

少なくとも小泉元首相は、アメリカの戦争を完全に支持していたのではないだろうし、もしかすると疑っていたのかもしれない。国連決議を優先したかったのかもしれないと、私には読めてしまいます。


少し横道にそれますが、現在小泉元首相は反原発運動を繰り広げられていますので、その部分だけは第三次アーミテージ・ナイ・レポートと相容れない立場なのは間違いないでしょうか。

いずれにせよ、日本の国際協調路線は、イラク戦争を機に大幅な対米最優先へと転換したのでしょう。


当時アーミテージ氏は国務副長官の立場だったとはいえ、日本のアメリカ支持を取り付けるだけではなく、小泉元首相から訪朝計画を打ち明けられるなど、日米間の最重要人物だったことがうかがえます。

 

ちなみにこの文章があるのは、日本財団のネット上の図書館。著者の許可を得て掲載したということですが、日本財団がアーカイブ化していることが興味深いです。「日本財団 図書館」とは-日本財団が過去に資金援助または実施した事業の成果を、より多くの方々に活用していただくためのサイトですと書かれています。この本は資金援助されていたということでしょうか。日本財団とは旧日本船舶振興会

先に書いたWikipediaには、こう書いてあるのです。

 

CSISは日本では公益財団法人東京財団日本財団の下部組織)と協力関係にある。東京財団の他にも笹川平和財団半田晴久が会長を務める特定非営利活動法人世界開発協力機構(WSD)がフェローシップ・プログラムの提携を行っている。


CSISの日本での拠点は、少なくとも拠点のひとつは日本財団ということなんでしょう。日本船舶振興会とは故笹川良一氏が、競艇をはじめるために作った財団。笹川良一氏は右翼、政財界の黒幕、勝共連合統一教会、山口組、CIAと、怪しいキーワードにまみれた人。それに戦後の武道団体の多くをまとめた人物という評もある。また一方で日本財団は、福祉関連の助成を積極的に行っていたりするから、訳が分からない。
ともあれアーミテージ - CSISの日本とのパイプは裏も表も強力だということですね。

 


ところで一番上の画像は、偶然見つけたこの動画から。この動画は、誰がアップロードしたのか謎ですが、最後に笹川平和財団のクレジットが出てきます。とにかくインタビューが掲載されているのですから、内容は本物でしょう。


笹川平和財団は2013年にCSISと「日米安全保障研究会」を組織しましたとの文字が出てきます。
座長は、アーミテージ米元国務副長官、ジョン・ハムCSIS所長、そして日本側からは加藤良三元中米大使となっています。この動画の中で、アーミテージ・ナイレポートについて、こう語っています。

 

留意していたのは、日本側に日本の意見を反映できる対等な組織が存在しないということでした。我々の研究はアメリカの政策立案者へ方針を与えるために作成されました。日本が前進しているのならば、日本自身の方針を持ち出してくるだろうと我々は願っていたのです。
そうやって話し合うことが出来る訳です。今、我々が笹川財団とやっていることは、まさにそれなんです。日本の専門家がアメリカ側と一緒になって意見を方針に反映させている。

 

1年後にレポートが出るということなので、そろそろ出るはずなんですが。

 

 

アーミテージ米元国務副長官の怪


イラク戦争では、さんざんアメリカが油田を手に入れるために起こした戦争ということが言われました。でも検索しただけでは、確たる証拠と思える記述は出てきません。
ただ恐るべき内容は、あちこちで出てきます。

これも根拠はハッキリしていませんが、元共同通信のジャーナリストの方が、「南シナ海南沙諸島海域での米中両国の石油権益調整に乗り出しているもよう」と書かれています。

2007/12/24
アーミテージ米元国務副長官の怪━南沙諸島海域の石油権益巡り中国と折衝中か

コノコ・フィリプスは、海底埋蔵資源では屈指の探査技術力を有するコノコと米石油メジャー中、中国国営企業との石油探査・採掘での提携関係でトップを走っていたフィリプスとが対等合併して2002年に発足した。同社はマレーシアの首都クアラルンプール(KL)を東南アジア地域の拠点としており、05年には南沙諸島海域での石油資源開発を最終目標としているとされるエネルギー資源探査専門企業ミトラエナジーを同じくクアラルンプールに設けた。

 

アーミテージ氏がコノコ・フィリプスの筆頭社外役員に就任したのは06年3月。ミトラエナジー社は、ほぼ同時期に、フィリピン・マニラに連絡事務所を設置。比エネルギー省(DOE)及びその傘下の比石油公社(PNOC)と密接な関係を維持しつつ、南沙諸島周辺海域に隣接するフィリピン領海で06年から中国国営の中国海洋石油(CNOOC)と共同で、石油・天然ガス資源の探査を行っている。元々、コンサルタント業務としては、米大手石油企業のアジア権益の調整役を重要な柱のひとつとして挙げている。中でも、南沙諸島全域の領有権を主張する中国政府とどう交渉するかが最大の課題となっていた。 

コノコ・フィリプスは中国にいち早く進出し、フィリプス石油中国公司(本社・北京)を設立。中国3大国営石油企業のひとつ、中国海洋石油(CNOOC)と共同で海底石油探査を実施していた1999年、渤海湾で中国の海底油田としては最大の「蓬莱19-3」を掘り当て、02年から商業稼動を始めた。比エネルギー省(DOE)は南沙海域に隣接するフィリピン領海で03年から公開入札制による石油・天然ガス探査事業を始めた。探査権を得た企業はミトラエナジーを含む米3大メジャー、世界最大の非鉄金属資源会社であるBHPビリトンなどオーストラリア企業、それに中国のCNOOCであった。


もしこれが事実だとすれば、南シナ海での緊張をよそに、ずっと以前からアメリカと中国で調整されている。アメリカの石油メジャーと中国国営企業で折衝されているということですね。
中国が南シナ海で埋め立てをしているのも、米の哨戒機による偵察活動もどういう意味があるのでしょう。日本もフィリピン、ベトナム両国に対して巡視船を提供したりしていますが、もしかしたら米中で分配は終わっていて、あとは周辺国から取り上げるだけ、なんて恐ろしいシナリオが想像できてしまいます。

 

たぶん日本からすれば、様々な安全保障の奥をのぞくためのキーマンは、どうしてもアーミテージ氏になりそうです。

 

 

 

アーミテージ氏とジョセフ・ナイ氏に、上の方で貼り付けているUSTREAMで進行役を務めている日経新聞編集委員の春原剛氏の対談本があります。

ちなみにこの本は、2010年の刊行ですが、春原剛氏の肩書きにCSIS客員研究員も含まれています。やはり日経新聞CSISのパートナーであるということでしょうか。

 

Amazon - 日米同盟 vs 中国・北朝鮮