マイクロソフトの人工知能BOTは、診断メーカーと大差なかった?
昨日(25日)、ネット上ではマイクロソフトが公開したばかりの学習型人工知能会話ボット「Tay」を緊急停止させたというニュースが溢れかえってた。
ネットのみならず、NHKまでがニュースにした。
このところ人工知能関連のニュースが多い。人間の仕事を奪ってしまうんじゃないかとか、漠然とした不安が広がっているからなのか、バズる話題だ。ネット上を中心に、さまざまな識者がコメントを出してる。
そういうのを読んでいて私は、もっと単純な感想を持ってた。
それはマイクロソフトの人工知能のレベルって、診断メーカー並みなんじゃない?
いくら学習型人工知能と言ったって、学んだ結果がヘイトスピーチとかだよ。
いち早く記事を出したengadgetによると
発言は直接引用するのも憚られますが、たとえば特定の人物について問われれば放送禁止レベルの差別語で罵倒したり、ヒトラーを礼賛してホロコーストはでっち上げと主張するといった発言が残っています。
要は昔からある人工無脳チャットボットを機械学習やBingの知識データベースなど最新の技術で高度化し、膨大なユーザーの暇つぶし相手を通じて多くのデータを集め、自然な会話ができる人工知能を目指す実験です。
診断メーカーは、こういう場合にはこう返すの組み合わせだから、診断の作者が笑いのセンスが高ければ笑える診断結果が出てくるし、人種差別をしたい人が作ったらヘイト的な結果が出てくる(もちろん利用規約違反だし、NGワードも設定されてる)。
そんな診断メーカーより、「Tay」はどれだけ高度で賢かったのか。
似たような会話を返す仕組みということなら、確か映画『A.I』の公式サイトでやってたと思う。もう公式サイトなくなってるから確認しようがないけど、まあ今までにもある仕組みだ。
それよりも、「Tay」はどれだけ高度で賢かったのか。
機械学習やBingの知識データベースを使っていると聞くと、IBMのワトソンを思い浮かべる。最近CMをやってる。
ワトソンの特設サイトにはこう書いてある。
Watsonは会話の文脈から意味を推論し、経験を蓄積して学ぶことによって、そのニュアンスや意図をくみ取ることができます。
会話を通して質問をうける接客やコールセンター業務には、相手の意図を正しく理解することが必要です。Watsonは自然な会話の中で質問意図を正しく理解すると同時に、膨大な情報の中から適切な回答を即時に導き出し、応答することができます。
なんか、「Tay」とそっくりじゃん(笑)
IBMに怒られそうだけど、TayとWatsonはどう違うのか。ハッキリしているのはTayは主にツイッター上の会話から学んでいるところ。
特設サイトには
もしも、すべての資料を読み、すべてを理解し、すべてを記憶し、その中から私たちの質問に最適な答えを提供してくれる人がいたとしたら。まさにそれがWatsonなのです。
と書いてある。すべての資料ってなんだろう。ディープラーニングしてるなら、すべての大部分はネット上にあるものだ。
SNSからも学んでいると言っている。
「Watsonとの対話」未来のトレンド
これって前に「人工知能は、人類最悪にして最後の発明か?」でも書いた感想と同じだわ。
2012年、Googleは「Youtubeで大量のネコの映像データを学習させ、機械にネコを認識させることに成功」したと発表。機械が、人間に教わることなく、自力でネコを認識したのがディープラーニングだと聞くと、なにやら飛躍的に進んだんだなと思います。
Youtubeのネコ動画って、そりゃもう愛くるしかったり、マヌケだったりヘンだったりして、過剰に癒してくれたり過剰に笑わせてくれたりする。でもそれは、現実にネコを飼っている人が日常的に見ている姿とは、かなり差があるはず。過剰な行動をネコだと認識しても、なんかね。
誰しもネットの世界では、現実の世界よりもある種の抑制が外れたような状態になる。オンラインだけで学ぶ人工知能のリアルは、かなり偏ったものかもね。
実用化が急加速していると言われる人工知能だけど、半年近く前に書いた感想と一緒だなんて。
このGoogleのディープラーニングする人工知能の名前は「DQN」。
「DQN」が先日、現代最高の囲碁棋士に4対1で勝利し、衝撃的なニュースとして世界中で報じられた「AlphaGo」の前身のはず。
どれだけ複雑でもルールが明確な囲碁の世界なら、すでに人工知能は人間を凌駕している賢さかもしれない。でもルールがあいまいな人間世界全体を相手にすべてを学ぶと、DQN化するのかもね。
今日のBGM-410【 Primal Scream - Where The Light Gets In 】