不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

杉並の「公園を保育園に」に大激怒する住民は、人口ボーナスで潤った人たちじゃないの?

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待機児童解消のため、杉並区が区立保育園を建てようと住民説明会を開いたところ、住民から反対意見が相次ぎ、5時間半にわたって紛糾したというニュース。
私はこれを初めて見たとき、ああー久我山ねぇ。あのへんだとそうなるわね。

と思った。

 

 

 

日本全国でこういうことはあるだろうけど、都市部特有の構造ってところもあるよな。どうして誰も言わないんだろうなと思いながら、見てました。


久我山に詳しいわけじゃないけど、なんどか行ったことはある。

子どもの遊び場? サッカーができない? ゲートボールができない? そりゃあできなくこともあるだろうけど、他の地域に比べればどれだけ恵まれてるか。老人だけかと思ったら、子育て世代の母親たちも、既得権を言い立てて、変化を許さないのね。
もちろんそういう場所は他にもいくらでもあるけど、サッカーができる公園って、日本全国でどれぐらいあるだろう。23区にどれぐらいあるだろう。

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問題になっている区立久我山東原公園をGoogleマップで見たら、100m程度のところに小学校がある。回り道しても1km程度のところに野球ができる久我山運動場がある。

上の画像には「富士見ヶ丘駅」が入っているけど、すぐ左上には「久我山駅」があり、両駅とも久我山東原公園から数百メートルの好立地。久我山駅から渋谷駅まで、井の頭線で13分。吉祥寺駅までは、なんと5分。環状七号までは2km程度、首都高の高井戸インターまでも同程度。不動産屋的な説明なら、住むところとして間違いなく一等地だろう。


利便性だけじゃなく、緑も多いし、だから私たちはここに住んでるんだ。保育園なんか造って、住環境をちょっとでも損なうな! という気持ちも分からなくはないけどね。

例えていうなら、私はこの電車に始発から乗ってる。その分、高い運賃払ってるから、妊婦が来ようが老人が来ようが身障者が来ようが知ったこっちゃない。優先座席に行けよってことね。

 


だけど、本当に高い運賃を払ったんだろうか。私が思うのは、そこ。


厚生年金を今もらってる人たちは、払い込んだ何倍もらえるだろう。昨年厚生労働省の発表した試算によると、2015年に70歳になる世代は、負担した保険料の5.2倍の年金を受け取れる見込みなのに対し、30歳になる世代以降では2.3倍だという。


この倍率自体、厚生年金は会社も同額負担してるから、実質は1/2。つまり30歳以降の世代では1.3倍ってことだけど、あくまでも試算。ずっと国が作文してる現実性の乏しい試算。


でもすでに今もらっている人たちにとっては、ほぼ現実の数字。先に年金を払いはじめたから、あとから来た人よりも長く払ってただけで、多くお金を払い込んできたわけじゃない。

 


杉並区は、中央線文化で若者の街?

 

杉並区といえば、一般的には中央線のイメージでオタク、若者、サブカルなんてことが思い浮かぶけど、それは区の北側。かつて「中央線の呪い」という面白い本があった。

高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪…中央線沿線に住むと、人は知らず知らず“中央線の呪い”を受けるという。その“呪い”にかかってDNAが中央線人化すると、能書きを垂れて金を出さずに口を出すようになり、食べ物にうるさくなり、ズルズルがやめられなくなるばかりか、頑固でしかも天の邪鬼になる!?呑み屋、旨い物屋、古本屋、猫、インド服、パンク、ヒッピー、エコロジー…ヘンテコなものが集中する中央線。一度住んだらヤメられない中央線。その魔力を痛快に解き明かす!魔界(沿線の町)ガイドとしてもどうぞ。

 

Amazon - 中央線の呪い

中古で1円だって(笑) それはともかく、取り上げられているのは高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪と、どれも杉並区だ。1999年の本だから、かつて若者だったパンク、ヒッピー、エコロジストも、すっかり中年になったんだろうか。

 

でも魔界な中央線文化は杉並区の北側。南側、特に井の頭線周辺は、かなり違う。老人層はハイソが多そうに見える。

 

杉並区は23区内で、高齢化率第3位で、高齢者の就業率は下から4番目

日本全体が超高齢化社会だけど、東京23区の中で見ると、杉並区は北区や足立区と似た構造で、けっこうヤバいんじゃないかと思える。


高齢化率が高くて、働いていないということは、困窮しているか裕福かのどちらかだ。

杉並区の超高齢化は、いつごろからだろうか。


杉並区のHPに人口の推移があった。人口の推移で、データのある昭和59年から総人口はそれほど変わらないし、生産労働人口もそれほど変化していない。変わったのは年少人口と老年人口だ。グラフ化してみた。

平成になるぐらいで、年少人口と老年人口が逆転し、高齢化の一途だ。

 

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では所得はどうか。

東京23区を世帯年収1000万円以上比率が高い順に並べると、港・中央・文京・渋谷・世田谷・目黒・杉並となり、第7位らしい。ちなみに1000万円比率は13.42%。100人中13人が年収1000万円以上だなんて、すごい数字。

逆に生活保護受給率ではどうか。杉並区は20番目で、1.09%。




年収の高い区はどこでもそういう傾向はあるだろうけど、杉並区は高齢化が著しく、働いていない高齢者が多い。でも裕福で、貧困率が低いという理想的なエリアに思える。これは、どういうことか。
根拠となるデータはないけど、たぶん不動産収入の高いエリアだ。

 


土地の高騰によってリッチ化しても、住み続けられる特異なエリアかも

昔から東京の都心に住んでいて土地を持っていた人たちは、軒並み大金持ちになっている。それは持っていた土地を売却したり、マンションやビル経営に乗り出したからだ。

もちろん騙し取られたとか、アホすぎて潰してしまったという人もいるだろう。
東京には環状道路がある。環状一号線は、内堀通り。皇居の周囲なので、ほとんど関係がない。明治通り(ほぼ環五)や山手通り(環六)あたりまでは、場所にもよるけれども巨大な都市計画によって、都などに売却した人が多いだろう。

もちろん小規模ビルや高級マンションを経営している人もいるけれども、私の感覚だと住み続けられている人は少ない。

 

ところが杉並区を通る環七や環八は、道路の周囲を含めて、大規模な区画整理を伴うような都市計画とか再開発を見たことはない。もちろん環七環八沿いに住み続けることは、環境面から難しいだろうけど、両側30mぐらいが、行政の騒音などの対策エリアだ。それより離れたところは、利便性と土地の高騰という、ほぼ恩恵だけを享受できているはず。

 

環七や環八に囲まれ、さらに井の頭線沿線になると、もっとすさまじい。野村総研が発表した2008年の沿線別の所得/金融資産ランキングによると、所得の第一位は江ノ島電鉄、第二位が阪急甲陽線、そして第三位が京王井の頭線
そして金融資産の第一位は、京王井の頭線なのだ。

大都市圏沿線別・所得/金融資産ランキング

そう今回、大激怒している住民たちは、日本でも有数の金持ちエリアに住んでいる人たちだ。

 

井の頭線に乗っていても、それほど金持ちエリアだとは感じない。それは京王線の中でも特に井の頭線は、たぶん沿線周辺を開発してこなかったからじゃないか。あるいは井の頭線を通したときに、すでに人口が密集していたからかもしれない。


調べてみると、1933年(昭和8年)に渋谷 - 井の頭公園間で開通したそうだ。1945年(昭和20年)に空襲で、壊滅的な被害を受けたとある。ああ、そうだ。第二次世界大戦末期に、東京は米軍の大空襲を受けてる。だから問題は、戦後だ。

区のHP、杉並区の歩みによると、
昭和7年:杉並区誕生 人口14万6,560人、世帯数3万1,583世帯
昭和8年:井の頭線開通 農家戸数全市で7位1,088戸
昭和16年:商店数4,409、工場数136
昭和18年:東京府東京市合併で東京都に
昭和19年:集団疎開で長野・宮城県
昭和20年:5月本区最大の空襲 11月集団疎開帰校

昭和37年:地下鉄丸ノ内線開通
昭和51年:中央自動車道高井戸・調布間が開通
昭和53年:久我山小学校開校
昭和62年:環状7号線沿道整備計画スタート

1945年(昭和20年)の終戦から戦後復興といっても、特にトピックスはないみたいだ。丸ノ内線開通、は、1964年(昭和39年)の東京オリンピック関連工事だし、環七が杉並区を通った年はよくわからないけど東京オリンピックのため。
第二次世界大戦前は農家の多いエリア。終戦後、特にオリンピック需要以降は日本の多くの都市部と同様に、高度経済成長で人口も増えた。
その中でも、環状道路や高速道路に囲まれ、かといって都心でもないから、通勤に便利でいわゆる山の手の住宅地として人口を激増させた。

 

ということは、井の頭線が開通したころは、沿線にほとんど人が住んでいなかったということね。


思い浮かぶ井の頭線沿線の、プチ名士像

一般的なイメージでは世田谷区とか大田区みたいな超金持ちエリアという印象を持っている人は少ないかもしれないけど、実際は井の頭線沿線が所得/金融資産で見れば、ダントツだ。

ざっくり考えれば、戦後移り住んできた人たちは、浜田山などのお屋敷町に住んだ人もいるだろうし、その他のエリアで一戸建てを建てた人もいるだろう。もちろん土地の高騰の恩恵を受けている。


農家だった人たちはどうだろう。富裕層になるルートは、マンションなどの集合住宅を建て、分譲と賃貸の両方でフローとストックを確保するのがいちばん賢い。私には、戦後の復興、高度成長期で銀行から農地をマンションにしませんかと持ちかけられた人たちがイメージとして思い浮かぶ。銀行から言われ、もう東京で農業やってる時代じゃないよなと、思ってしまった大勢の人たち。

 

終戦時には中年で、疎開から戻ってきた小学生の子どもがいる。その小学生たちは、今は高齢者。終戦のときに10歳なら、今は70歳だ。そして、現在は40代後半の息子娘たちがいる。そしてさらに小学生の孫たちがいる。
強引にこじつけたんじゃなくて、住民説明会で怒ってた人たちを見て、ああーきっとそういうのが住民の特徴的なパターンなんだろうなと、自然にイメージが湧いてきた。


もっと都心のエリアだと、異常に資産家過ぎて、貧困老人かよと思えるぐらいの身なりでカモフラージュしている人たちも少なくない。もしかすると偶然資産家になったという引け目があって、子や孫にもそうさせているのかもしれない。
郊外の例えば国道16号線周辺の大規模な駅周辺だと、江戸時代からの昔からの豪農とかで、大地主がいくらでもいる。そういう人たちは名士然として偉そうだったり、横柄だったりするらしい。

 

井の頭線沿線の資産家はどうか。調べると、関東大震災後に文化人が大勢移り住んだらしい。浜田山には松本清張も住んでいたそうで、文化度の高いエリアとして続いていると想像できる。
北側の中央線沿線とはかなり違うけど、吉祥寺はそれなりの漫画家エリアだし、サブカルエリアであることも続いてるから、全体のカルチャー度としては低くない。都心からタクシーで帰っても、たぶん2000円3000円だろうから、老人でも都市的な空気感を持っているはずだ。カンタンに言えば、リッチな意識高い系のプチ名士なんじゃないかと。

 

いずれにせよ、そうやって富裕層になった人たちは、たいがい法人化してる。

マンションやビルの最上階に住み、息子や娘も管理会社の役員だったりする。建てた本人は偶然富裕層になったことを知ってるだろうから、まだしも。その息子や娘、そして孫になると、何代目かの、生まれながらの資産家なので歯止めはない。実際、何にも働いていない人も、そこそこいるしね。

 

資産が形成されたのは、本人たちの努力がないとは言わないけど、ほとんどが公共事業による土地の高騰。公共事業は支払った税金ではなく、ほぼ様々な国債によるものだ。要するに先食いした、国の借金。

その借金は、国民全体で払って行かなきゃいけないのよね。


人口が増えたのは、戦争の「産めよ増やせよ」政策、そして終戦に安堵した人たちによる第一次ベビーブームだけど、要するに第二次世界大戦が起点。その人口ボーナスによる高度経済成長が、インフレ、土地価格の高騰を招いた。

 


杉並区は、東京の中で最も子どもを産んじゃいけない区?

実際に怒ってたのは、たぶん一戸建てを建てて移り住んだ人たち。Googleマップの写真で見ると、久我山東原公園の周辺は、ほとんど一戸建てだらけだ。皆このエリアのステータス感は持っているはず。

それは、専業主婦やれない夫婦が子ども産む場所じゃないんだよ。それぐらいのリッチで文化度の高い人しか住めないよ、というね。
あるいは、すぐそばに子どもがサッカーできる公園まであっての資産価値だ。もしくは、込みの家賃を払ってると。

子供が自転車で遊びに行くなんてことは、想像外の生活が日常なんだろう。

 

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ゾッとしたけど「保育園は必要だと思いますけど、もうちょっと時間をかけて」とか言ってるおばさんもいた。時間かけてたら、いったい何年後にできるんでしょうね。巧妙な言い回しだけど、優しさを装っても、言いたいことが透けて見える。必要だと分かってる上で、でも私たちには関係ない。このあたりには必要ないってことでしょう。
つまりは住環境が悪くなって、持ち家の資産価値が下がるってこと?

 

社会統計学の舞田敏彦さんが、住民基本台帳などから出した2013年の「東京都区内23区の出生率保育所供給率」によると、杉並区は保育所供給率でダントツのワーストワン。たぶん井の頭線沿線だけで出したら、さらに低い数字だろうという気がする。
そして「保育所供給率と出生率の相関」では、保育所供給率と出生率がキレイに正相関している。

保育所供給率と出生率の相関 

舞田敏彦さんは、こう書かれている。

「母親を家庭に押し込める」ではなく,「母親の就業チャンスを促す」というのが,出生率向上の施策の基本スタンスとなるべきなのでしょうね。

でも国が産めよ増やせよと言ったって、東京には専業主婦の出産ならいいけど、そうじゃなきゃ来るなという金持ちエリア、住宅街が多いのよね。


1/3は極端にしろ、子どもが産めないとこうなりそうなのにね。
「現役世代負担率(20~64歳に対する65歳以上の割合)から予測する、少子高齢社会・驚愕のシナリオ」

 

Amazon - 日本の地価が3分の1になる! 2020年 東京オリンピック後の危機

 

 

もう東京周辺なんて、これから子どもを産もうとする人が住む場所じゃないと思うけど、どうしても東京だというなら「かつては西高東低、今は逆」という考え方は、ありかも。

Amazon - 東京どこに住む? 住所格差と人生格差