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不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

『格差固定』と風俗がセーフティーネットという本

[読んだ本から]

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『格差固定』の著者は、三浦展さん。この本の帯に書かれている通り、2005年に出版された『下流社会 新たな階層集団の出現』から10年後の調査結果を元に書いた本だ。

 

 

Amazon - 格差固定 


三浦展さんの本は、面白い。面白いといっても、2タイプある。センセーショナルでキャッチーなタイトルやコピーをつけたもの。そして思想的な新しい提案を持ったものだ。


私は両方とも面白いと思うけど、好きなのは後者だ。
後者は以前書いていた[読み終えた本]というブログで取り上げたけど、建築家・隈研吾さんとの対談本『三低主義』は抜群に面白い。三低とは低価格・低姿勢・低依存のこと。それに『日本のために「シェア」の話をしよう』『地価下落時代に資産を守る!』などは、とても先見的だ。

 


前者は、それ以外の本の多くがそうだと思う。さまざまなデータをベースにしているけれども、キャッチにところに流し込みすぎ。そして『格差固定』は、後者だ。大筋でそうだろうなと思うし、なるほどとも思うけど、どこか恣意的な解釈に貫かれている気がする。


上流男性は自民党に投票した

下流社会 新たな階層集団の出現』では、中流階層モデルの崩壊。新たに下流を形成しつつある集団として、団塊ジュニア男性なら「自民党、フジテレビ、スポーツ観戦が好き」、女性なら「自分らしさを口にしたがる傾向」というところが象徴的に扱われている。
10年後の『格差固定』では、投票政党として、上流が自民党、下流は維新かというタイトルが出てくる。雇用形態別に見ると自民党が多いのが学生と公務員。特に学生の44%が、自民党に投票したという驚くべき結果が出ている。女性の「自分らしさ」に対応する内容はないので、男性だけ見ると、確かに上流男性は自民党支持が多いという印象がある。


え、どうしてかって? 身近かでも医者だったり、大企業勤務だったりする人たちは、自民党支持者ばかりだという個人的な印象だ。ネットでもIT系の論客たちの多くは、デモをDISっている。
まあ上から見ている上流の方たちは、そうでしょう。その人たちが愛国的な行動をしてるかというと、たぶんそんなことはない。大企業のサラリーマン以外は稼いでるほど税金は払ってなさそうだし、日本国債を買ってそうもないし、ましてや原発のそばに住んだり、自衛隊に入隊なんてしないだろう。きっと、そういうのは下々のお前らがやれという感覚なんだと思う。つまりは上から目線どころじゃない強烈な階層意識、上流意識を持っているんじゃないだろうか。

デモに行ってるやつは採用しないなんて言い方も広がってったけど、まさに上から。雇ってやる雇ってやらないは、俺たちの階層が決めると。見方を変えると、自分たちは安泰だと言いたいのかもしれない。

 

どうしてこんなことを書くかというと、『格差固定』でも上流・中流・下流の定義は特にない。本人が、どこに属しているのかという意識だけだ。雇うという意識は上流以外では考えにくいし、雇われるという感覚を持っていたとしたら、たぶん中流か下流だろう。

 

上流・中流・下流は本人の意識による区分

上流・中流・下流とか格差という議論は、ここらへんが大きな欠陥。上流意識を持つ人が、いまの自分の地位を維持してくれる体制を支持するのは、想像しやすい。

そりゃあ一部上場企業に勤めてれば、上流意識を持ってたっておかしくない。だけど東芝はもちろん、三井不動産系列や旭化成関連だって、これから大規模なリストラがあってもおかしくないんじゃない。楽天ソフトバンクやLINEがいつまで勢いのある会社でいられるか? 銀行証券生保だって、そうでしょ。医者や弁護士だって、AI化によって活躍できる場所が縮小されるかもしれない。

 

持ち家ですといったって、三浦さんのいくつかの本にあるようにこれからさらに地価が下落するなら、ストックのあるなしもあまり目安にはならなさそうだ。
そう考えると上流・中流・下流の意識を持ってたって、それが何年続くんだろう。

 

リアルなのは、いまの時点でフローもストックもない下流だ。
『格差固定』では、「10年前に下流の人は、いまも7割が下流のまま」とか、「10年前に無職だった男性は誰ひとりも正社員になっていないどころか、非正規雇用にもなっていない」というゾッとすることが書かれている。この原因はそれぞれの意識なのか制度なのか。
少なくとも「階層上昇するためにも時間も金もかかる」とあって、大学を出ても階層上昇するとは限らない。「男女とも大学院修了して比較的階層上昇できる」とある。一方で下流の親は子供の学費に負担を感じているとある。負担を感じていてたとしても、大学に行くのに何らかの費用を負担できる親が下流なんだろうか。もっと金のない世帯はいっぱいあるはず。

 


いろいろオソロシさは伝わってくるけど、ここらへんに自らの意識で上流・中流・下流と分けてしまうことの矛盾を感じてしまう。

しかし大学院を出たからといって、職業能力に直結するはずもないから、もしかすると社会全体が身分制的な価値観になってきているんだろうか。


風俗がセーフティーネットという本

『格差固定』と同時期に読んだのが『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』という本。キャバクラやクラブということなら大昔から珍しくないけど、風俗に女子大生となると、かなりビックリだ。

 

Amazon - 女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル

 

この本では、40年前と比べて、大学の学費が重くなった。大卒男子初任給は約2倍強の上昇、ところが学費は4~15倍に膨れ上がっている。この容赦のない学費高騰が「平成型苦学生」を生んでいると指摘している。
あー、そんなに上がってるんだ。私も学費は高いと思ってるけど、そこまでとは。
さらに2004年、日本学生支援機構が誕生し、そこから「奨学金」は変貌した。しかも「奨学金」という「支援や給付を想像させる」仕組みだが、実態は単なる学生ローンで利子で利益を上げる金融ビジネス。そして大学生の50%以上が、この「奨学金」を利用しているという…

ってことは、国の仕組みか。世界中に金バラまいてる場合じゃねぇぞ、こら。と言いたくなるけど、まずは15倍なんていうとんでもない値上がりがどうして起こったんだ、というところ。

しかし個人的には、借金してまで大学に行く意味あるのか、とは思う。
そうはいっても『格差固定』によれば、「男女とも大学院修了して比較的階層上昇できる」とあるから、行かせたいと思うのが親だろう。だけど親には金がないから、本人が借金を背負うと。なぜ金がないかというと、90年代後半から年功序列型が崩れて、世帯収入が低下し続けている。


卒業時には1000万円近い借金も

この本ではフルに4年間、日本学生支援機構から借りている沖縄の女子学生のインタビューが掲載されているけれども、卒業時は883万円の借金になるという。ちょっと、絶句。
そこまで借りる方も借りる方だけど、貸す方がおかしいじゃないか。学生支援機構とは名ばかりの、サラ金じゃないか。

そうなると時給680円のバイトをしてるわけにいかないから、時給が良くて日払いの風俗に走る。女子学生だけじゃなく、男子学生もカラダを売ったりしているという。

 

性のハードルは年々下がって来ているし、風俗で仕事する人たちがイヤイヤやっている人ばかりじゃないと思うけど、それでもこの選択肢のなさには目眩がする。

 

今日のBGM-399【Aphex Twin - Window Licker】