深夜に高熱出して救急搬送されたらどうなるか
2年半ぶりぐらいの投稿です。
書く気になったのは、この内容は書いておくべきだな。実際にコロナ禍で救急搬送されたらどうなるかの現実だし、どう対処すべきかを考えておく助けにもなるはず。だと思ったんです。
万が一の事態は、突然やってきました。私だってこういう現実を、あらかじめ知ってたらなと思うところがあります。
あまりにリアルに書くと迷惑がかかってしまうので、少し変更して書いているところありますが、概ね実際に私が経験した内容です。12月のことです。
夜の10時過ぎ、奥さんが吐いた
私がテレビを見ていたら、寝室で奥さんが何か叫んでいるのか、とにかく普通ではない声が聞こえてきました。
どこかぶつけたとか、そんなことだろうと思っていたら、声が続きます。どうしたよと寝室のドアを開けると「来ないで!」と叫びます。床に吐いたのが見て取れました。
「袋と拭くもの持ってきて!」というので、ドアを閉め、小さなゴミ袋とタオルを3枚ずつ、それとアルコールの除菌シートを取って来ました。それらを渡して「どうすればいい?」と聞くと、何もしなくていい。今日はリビングで寝てと言います。
吐いて来ないでということは、もしかしてコロナを疑ってるということか。奥さんは医療従事者です。感染症を予防するための基礎的な知識はあります。
でも私は魚介類か何かの食中毒を疑っていました。同じものを食べても、私は平気なのに、奥さんが七転八倒ということが何度かありました。
営業停止になった寿司屋もあります。保健所によると、同じ症状の人が複数名いたそうです。問題のネタがひとつだったのかどうかは分かりませんが、とにかく私が平気なのに奥さんがダメということが数年に一度はあります。そんな経験から、私はコロナじゃないだろ。コロナで吐くなんて症状は聞かないよな。たぶん違うだろう。
とにかくもしコロナだったら、とっくに私にも感染してるはず。今さらジタバタしてもねぇと思っていました。それでも、ソファーで寝ることにしていました。
25時過ぎに再び叫び声が
風呂から上がって、YouTube見ながらストレッチをしていたら、また叫び声がしました。なんだよとビックリして駆けつけると、「ダメかも。救急車呼んで」「胸が痛くて熱がある」「息すると痛い」と言います。いや、じゃあオレが運ぶよ。とにかく熱測れと返事すると、体温計持って来てと言います。
そこで私はちょっと驚きました。さっき吐いたものを処理した後、体温計と飲料、それに濡れタオルと普通のウエットタオルなどを持って来て、ベットサイドに置き、そのことを伝えたのです。それなのに分かってないということは、意識がハッキリしてないのか?
ともあれ、体温計を手渡しし、ノートパソコンを開いて夜間救急を探しました。
行政のサイトによると複数の病院が出て来ましたが、近場では2つ。受け入れてもらえるかどうか電話をしましたが、どちらも呼び出し音だけで出てくれません。
再度奥さんのところに行って体温計を見ると、39.1と表示されています。いや、これはヤバイかも。今までこんな高温になったことあるのかなと、心配度が跳ね上がりました。
時間かけてる訳にはいきません。サイトにある救急車を呼ぶかどうか迷っている人はここに電話しろとある番号にかけ、状態を説明すると、2つの病院の番号を教えてくれました。すると今度は両手とも出てくれたのですが、対応は同じでした。
まず出てくれた人に症状を伝えます。そして「ちょっとお待ちください」があって、医師らしき人に代わります。再び症状を伝えると、「受け入れはできません」との返事。あー、そうかと落胆しました。コロナ禍なので、発熱患者を簡単に受け入れられないのは理解できます。しかし、このプロセスはまったくの無駄でした。
無駄なのは、夜間救急を探すというところからです。行政のサイトに夜間救急と書いてあっても、発熱していたら、まったくないのと同じなんだな。電話で案内されても、病院の実情とは違うんだなと感じました。
私はかなり冷静な方ですし、この時も慌ててはいません。電話で三度、症状を説明しているときにも、的確で過不足ない内容だと、しゃべりながら自分で冷静さを確認できていました。しかしサイトを検索してから、2つの病院に断られるまで、20分近くかかっています。これは本当に無駄でした。
夜間に発熱したら、自分で病院を探そうとか連れていくとか、まったく無理。無駄なことせずに、さっさと119番に電話すれば良かった。そう思います。
救急車が到着したけれども
119番に症状を伝えると、「10分ほどで救急車が到着します」との返事。
奥さんのところに行って、コートがあればいいかと聞くと、あそこのあの色のを持って来て、それにあのバッグもと言います。そして付け加えて、「39.5度になった」と。
あ〜、それはヤバイと思いながら、保険証とか財布とか小銭とかを用意し、防寒性があって動きやすい服に着替え、用意万端で救急車を待ちます。
ほどなく救急車のサイレンが聞こえて来ました。
玄関ドアを開け、道に出て救急車から見えるように手を上げます。救急隊員の人が「(家の中へ)行きましょう」と言われました。
いや玄関先まで連れて来ますと答えました。こういう時どうすべきなのかは分かりませんが、意識はあるし階段を降りてくるので、私一人の方がスムーズだろうなと思ったのです。
奥さんは救急隊員に支えられながらも、自分の足で救急車のステップを上がりました。
改めて救急隊員から症状を聞かれます。私が答える前に、奥さんが自分で喋ります。聞いていると過不足ありません。こいつは気丈だな。ぜんぜん大丈夫だと、とりあえずは安心だと思いました。
最後に服用している薬はありますかと聞かれ、薬名を答えていました。
そう、既往症があるのです。それは、喘息。医者からは「コロナになったら死ぬからね」と言われています。だから本人も、私もとても気をつけています。気をつけてはいても医療従事者。不特定多数に接するので、感染のリスクは普通の人よりは、はるかに高いはずです。
救急隊員が病院に電話をかけ始めます。
嘔吐、発熱、39.5度、呼吸器、医療従事者などと説明しています。正確にはこれらの単語ではありませんが、発熱という言葉の前に「ずばり」という言葉を使われていました。
私は内心これって「コロナの疑い濃厚どころか、ほぼ確定だけど受け入れてくれるか」という意味の「ずばり」なんだろうなと思いながら聞いていました。奥さんはコロナじゃないよと思いながらも、病院への説明を聞いていると、プロがコロナだと判断しているっぽい。もしコロナだったとしたら、今から何をすればいいんだろうとあれこれ考え始めました。
受け入れ先が見つからない
考え始めたのは、コロナの確率が上がって来たから、ではありません。確かに救急車の到着以前と比較すれば、もしかしてという気持ちは膨れていましたが、この段階でも私は、根拠なくコロナではないだろうと思っていました。
これからの行動を考え始めたのは、救急隊員さんが10以上の病院に電話をかけ、断られ続けていたからです。時間は見ていませんでしたが、救急車が家の前に停車していたのは30分以上になっていたと思います。
「ずばり」で始まり、症状を伝えて断られる。同じフレーズと展開を何度も聞いていたら、目前のことは救急隊員に任せておくしかない。自分はこれからをシミュレーションして、何をすべきか考えておくしか、この段階では役に立ちそうなことがないと思ったのです。保険証書はどこだっけ。公私で連絡しなきゃいけないところは。入院したら揃えなきゃいけないことは、などなど
いや、それよりも、受け入れてくれるところは見つかるのか・・・
プロがそれだけ電話をかけ続けて断られているのなら、素人の私が自分で探せるわけがありません。少なくとも、電話をかけると判断する人が出て、ダメだの判断はすぐに出ている。
遠くの病院で受け入れてくれるのか、それとも自宅でなんとかしてくれということになるのか。
自宅で療養するなら、何が必要なんだろう。調べなきゃと考え始めたところで、受け入れてくれるところが見つかりました。
病院名は聞いたことありませんでしたが、とても近いところです。これだけあちこちに電話して、近いところで見つかったのが驚きです。
自宅前で30分以上赤色灯を回していた救急車が発車しました。
搬送された病院での対応
救急車の中から外は見えません。見えませんが、ほとんど止りません。深夜ですから走っている車が、とても少なかったのでしょう。たぶん数分しか経っていないと思いますが「まもなく到着します」と声がかかりました。
救急車から降りると、私はすぐに事務の人から「こちらへ」と、非接触型の体温計で検温されてから、救急の待合室に通されました。奥さんはストレッチャーのまま、救急の大きな扉から中に運ばれています。
私は奥さんの保険証を渡し、通常の診察で書くような問診票などに記入。すぐに保険証とともに診察カードを渡され、「ここでお待ちください」と言われます。
これであとは、ずっと待ってるだけかな・・・
このときに思ったのは、私は鈍いのかな。とにかく場違いなぐらいに冷静だ。まあ慌てても考えてもしょうがないから、冷静でいいんだわ。
と何も考えずボーッとしていました。姿勢だけはちゃんとしてようと、まるで椅子に座った座禅のようにして。
三十分ほどしてからドアが開けられ、看護師さんから「先生からお話があります」と呼ばれました。
先生のところに行くと、かなり疲れてるご様子。けっこう若いけど、これは先生の方が病気になりそうだわ。この姿勢はやばいよと余計なことを考える。
先生からは、CTの映像を見ながら「ここに影がありますので、何かしらの炎症を起こしているんでしょう」「現在熱は下がっています」「夜間ですのね、できない検査の方が多いです。PCRとか」「明日も症状が続くようなら、昼間に来院されて検査してください」というお話があった。
「よろしいですか?」と聞かれ、「分かりました。ありがとうございます」と答えると、看護士さんから「これに記入して、待合室でお待ち下さい」と紙を渡された。
書かれていたことは、医師の話を理解したかどうかのチェックだったと思う。
待合室で、つまり肺炎を起こしているということか。点滴などの処置で熱は下がったけど、夜間診療ではこれ以上のことは判断できないし、治療もできないってことね。
とりあえず帰ろう。
ほどなく別の看護師さんが入って来て「奥さまの靴はどちらですか?」と聞かれる。
え、靴。靴は持って来たし、救急車からも私が持って出たけど。と私が不思議そうな顔で靴を持ち上げたからか「車椅子ですので、持って行きます」とおっしゃる。「え、車椅子ですか!?」と驚くと、ストレッチャーで運ばれたら車椅子で移動するとのことだった。
家から救急車までは、私が片腕を抱えて支えただけで歩いてたけど、歩けなくなったのか、そういう決まりだけなのか。と、初めて、ここに来てからの症状が心配になった。
でも車椅子を押されて入って来た奥さんの表情を見て、いや大丈夫だ。熱が抑えられたからか、目に意志が出ていて頭が働いてる感じがする。
直通の電話機が設置されていて、それでタクシーを呼ぶ。他にもタクシー会社の番号が書いてあるが、どこも受け付けは3時までだ。まあ明け方に営業したって採算取れないよな。そんな中、来てくれたタクシーはありがたい。運転手さんは、コロナのリスクだってあるというのに・・・
帰宅してから、奥さんに明日、発熱外来に行こう。初熱外来の受け付けは、午前中2時間、午後3時間だけだ。今から寝て、現実的に行けるのは午後だから、じゃあ何時に起きて、何時に出かけようという話をしました。
今さら意味あるのかと思いながらも、私はソファーで寝た。
発熱外来での対応
翌日、車で病院へ向かいました。
抗生物質と解熱剤が効いているのか、かなり大丈夫になっているものの、やはり呼吸をすると胸は痛いといいます。
車に奥さんを残し、受付をします。受付で昨日救急で運ばれたことなどを話すと、発熱外来用の用紙を渡されましました。体温や現在の症状などを記入し、受付に渡すと、発熱外来用のスペースで待つように言われます。
車から奥さんを連れて、そのスペースへ。距離はありますが、支えてゆっくり歩かせると問題なさそうでした。指示されたスペースは、事前のチェックをする場所のようでした。待っていると、たぶん防護服とフェイスシールドとマスクをした看護師さんがあらわれ、体温、血圧と問診がありました。
そこからさらに、移動して検査を受けてくれと言われます。
一度建物の外に出て、歩いていくと、発熱外来らしきスペースがあります。そこは昨日運ばれた救急のエリアと接していました。
外には大きなストーブが複数あり、椅子が置いてあります。少し離れた場所では、テレビで見るような屋外の検査スペースがあります。完全に仕切られた場所からゴム製のような腕の形が出ていて、患者は外に座って検体採取されるのでしょう。
奥さんを椅子に座らせ、扉を開けて入っていくと、防護服姿の看護師さんから外で待ってくてくれと言われます。待っている間に、事前検査のところで渡された紙を読むと、発熱外来で行う検査は二種類。インフルエンザ検査と抗原検査だとあります。
問題はそのあと。赤字で「新型コロナだと判断された場合、診察はできません」とあります。
え、治療ができない・・・ 発熱外来を設けているのに診察できないと。どういうことだよ。どうしろっていうわけ!? 陽性だったら、結果だけ受け取って帰れということなのか?
さらに読むと、「自宅で保健所からの指示をお待ちください」とあります。
そうか。救急で受け付けてくれても、発熱外来で検査してくれても、コロナだったら治療はできないと。救急で受け付けてもらうだけでもこれだけ細いルートしかなかったのに、発熱外来はさらに少ない。コロナ治療となると、さらにさらに少ないってことなんだな。
なんとなく予感はあったけど、コロナとなったら、かなり色んな覚悟をしなきゃいけないわけね。
奥さんが言うには、コロナのクラスターが発生した病院では、入院患者をグループや関連の病院に転院させてる。感染病棟があってもいっぱいになりつつある病院でもそうだけど、感染病棟のない病院では、コロナ患者を受け入れるわけにはいかない。
すでに今までの医療体制は崩壊しつつあるけど、ことコロナ患者に対しては崩壊してるのと同じなんだということだった。
私も情報や知識としては、そうなんだろうなと理解してた。でもこういう風景を目の当たりにして、選択肢のなさを突き付けられると唖然とする。
奥さんが呼ばれ、検査ボックスの前に座って検体採取されている。いや、されているようだ。後ろからしか見えないから、様子はわからない。
奥さんがストーブのところに戻って来て、インフルエンザと抗原検査で二度鼻の奥の方まで突っ込まれて痛かったという。聞いてるだけで痛そうだ。
インフルエンザも抗原検査でも陰性と判明した
看護師さんから、検査結果が出ました。両方とも陰性でしたと言われ、さらに診察までしばらくお待ちくださいと伝えられた。
ああ、陰性なんだ。それは良かったけど、抗原検査の精度は低いと聞く。それに肺炎であることは間違いないので、それほど安心はできない。抗生物質が効いているなら、ウイルスではなく、何かの菌なんだろうけど。
呼ばれて診察室に入ると、この先生も疲れている感じだ。肉体的に疲れているというより、精神的に疲れてるみたい。やっぱりコロナのために、過酷なんだろうか。
先生の説明でも、コロナじゃない、何かの菌が肺に入ったんでしょうということだった。
私は外に出されて、触診か何かをされて終了。最後に奥さんが「体調が戻れば、勤務していいでしょうか?」と聞いたみたいで、先生が「それは勤務先に聞いてください。先生の判断になります」と言いながら一緒に診察室から出て来た。
看護師さんが「今なら検体がありますから、PCR検査に出せますよ。今、勤務先に必要かどうか聞けますか?」と教えてくれた。奥さんが電話をして確認すると、PCR検査してくれとのことだった。
私は聞きながら、そりゃあそうだ。医療機関に勤めていて、PCR検査せずに出社していいわけがない。この流れでここからPCR検査に出してくれるなら、それが一番早い。もし他の病院でやろうとしたら、やってくれるところを探さなきゃいけないし、完全に自費で一からやるのは馬鹿みたいだと思った。
PCRの検査結果は一両日中に出るはずだから、結果は出るはずだから電話で教えてくれるという。
抗生物質と解熱剤の処方箋が出ていたので、調剤薬局に回ってから家に帰った。
PCR検査も陰性だった
翌日、奥さんのケータイに電話がかかって来た。陰性だと伝えられたという。
良かった。
一安心だけれども、コロナ感染のリスクは、この頃よりまでも高まっている。感染者が急増しているんだから医療機関の逼迫度合いも、さらに高まっている。
もし発熱したら、ここに書いた以上に厄介なことになるのは間違いないだろう。
この文章が予備知識になったり、現状をリアルに感じてもらえれば幸いです。
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