クラウドソーシングでやるなら、田舎に住もう
週末、クラウドソーシングについて書いてる記事が、はてなのおすすめブログになっていて、読んでみた。
あああ〜、全面肯定してるってことは、また意識の高いブロガーかなと思った。ところがプロフィールをチェックすると、大学生が書いてたので驚いた。
「会社勤めを辞めても、フリーランスで仕事出来るプラットフォームが整ってるから、すぐに仕事出来る」みたいなことが書いてある。なるほど、そりゃあそうだ。受注できればお金になるもんね。
たいがい、クラウドソーシングについて肯定的な文章を見かけると、ステマだろうなと勘ぐってしまう導線がある。だけど大学生が全面肯定してるってことは、世の中の意識が変化してきてるのね。じゃあ私ぐらいは否定的な文章を書いといてもいいよね。全面否定じゃないんですけど。
そもそも、クラウドソーシングって何?
Wikipediaによると
クラウドソーシング(英語: en:crowdsourcing)は、狭義では不特定多数の人に業務を委託するという新しい雇用形態。ウェブサービスのトレンドの一つでもある。群衆(crowd)と業務委託(sourcing)を組み合わせた造語。
ということなんだそうです。この中に「雇用形態」という言葉がありますけど、たぶん行政的には、「雇用」じゃない。クラウドソーシング側でも「雇用」だとは言わないはず。あ、クラウドソーシング側と書いたけど、クラウドソーシングサービス側ってことね。サービス/プラットフォームを提供しているのは、場を提供しているだけ。
場を提供というと、つまりは出会い系と同じ。出会い系の仕組みといえば、ビジネスマッチングサービスを大手でやっているけど、あれは本当にお金を取って場を提供しているだけで、なんの保障もしない。
それに比べれば、クラウドソーシングはお金の支払いに関しても、プラットフォームを提供している会社が仲介して保障しているから、受注して仕事を納品すれば、確実にお金が支払われる。その代わり、発注者とは直接連絡ができない仕組みになってる。
クラウドソーシングで今勢いがあるのは、仕事を受ける側が、ほぼクリエーター・制作系の個人対象。つまりグラフィックデザインやウェブデザイン、コーディング、プログラム、ライティング、撮影、イラストなどがほとんど。
仕事を依頼する側が案件を登録。例えばお店のロゴを作って欲しいと。それを見たクリエーターは、実際にロゴを作って応募する。採用されれば、最も高い場合で5万円が貰える。だいたい、そういう仕組み。
5万円の仕事なら、応募が殺到するから、選ばれる確率は低い。
ロゴの話は象徴的で、起業家の家入さんが「ロゴなんて5万円で出来る」とか、ホリエモンも似たようなことを言って、騒動になった。ちきりんさんも「今度は自分の名刺のロゴを、クラウドソーシングで作りたい」みたいなことを書かれてた。
だから一般的には、クラウドソーシング=ロゴ=5万円みたいなイメージなのかもしれない。フリーランスのデザイナーで、ロゴ作って5万円なら、ぜんぜんいいじゃんと思うだろうし。
でも例えば、ちきりんさんと関係のあるクラウドソーシングの[ライティング]の案件では、webコンテンツの「おならに関連する記事の作成」¥5,000~¥50,000 、ブログの「【50円】バスト、胸、乳房に関する記事300文字以上」¥50/件みたいな仕事が出てる。
恣意的に出したわけじゃなく、スクリーンショットを出そうかと思ったけど怒られそうなので、一番上のふたつをピックアップしただけ。内容はともかく、300文字以上を書いて¥50って、どんなに書くのが速いライターだって最低賃金行かないだろう。
それでもokなのよ。だって、雇用じゃなく、業務を請け負ってる個人事業主なんだから。個人事業主が了解すれば、法的にはなんの問題もない。
こういうギャランティで「会社勤めを辞めても、フリーランスで仕事出来るプラットフォームが整ってるから、すぐに仕事出来る」と考えるのは、ちょっと無茶だ。
直接発注者とつながってる仕事があって、穴埋め的にクラウドソーシングを利用するというスタンスならいいと思うんだけど。そうするとね、個人ではなく複数で組んで仕事していながら、穴埋めはクラウドソーシングを使うという使い方が現実的なのよ。
クラウドソーシングなら世界的な海外のデザイナーも参加できる、発注できるという夢を語る人もいるけど、そんなのはクラウドソーシングがなくたって金さえ出せばできること。世界的な世界的な海外のデザイナーが参加していたとしたら、それは広告として起用しているだけ。ユニクロだって、一部ラインを著名なデザイナーが手がけるなんてこともやってるし。
それでもクラウドソーシングは拡大するし、ギャランティは下落する
現在、最もクラウドソーシングでお金になっているのは、コーディングやプログラムなんじゃないだろうか。たぶん受けているのは純粋な個人じゃなくて、複数で組んでいるチームや小規模な会社。ボリュームも出やすいし、ネットでの発注に向いている。
仮にそうだとしたら、この手の仕事のギャンティはどんどん低下する。なぜなら発注側に英語のスキルがあれば、海外に発注できてしまうから。
クラウドソーシングじゃなくたって、日本で設計、海外でプログラムを書くなんてことはあたり前に行われてる。クラウドソーシングを通じて、海外のチームや小規模な会社に発注が流れれば、ギャランティは限りなく下がっていく。
いや、ネットを使って完結できる仕事なら、あらゆるギャランティ相場は世界で最も安い地域に近づく一方だ。
例えばネットを使った英会話の取得に、東南アジアの大学生を先生として使うことでコストを大幅ダウンした、なんてこともあるし。
それで儲かるのは、プラットフォームを運営しているところだけってことよね。
じゃあ、何が必要になってくるのか
コンピュータとネットを使って完結するような仕事のギャランティは、どんどん低下する。クラウドソーシング以外で仕事する場合も、クラウドソーシングの相場に引きずられる。最初の方に書いた「ロゴなんて、5万円だろ」という発言がそれ。
ところがこれには落とし穴があって、「発注する側の知識やスキルが豊富」じゃないと、受け取ったロゴデータだけでは使えなくなる。例えば、最小で使うときにはどうするのか。制服に刺繍するときにはどうするのか。映像の中に入れる時には、どうするのか。などなど、発注する側に知識やスキルがあって、選考する段階や実際に使用する段階で行き詰まる。
発注する側のリテラシーが高くなることって、あまり考えられない。高ければ、クラウドソーソーシングを通じて仕事を出さなくても、通常の個別発注で十分にやれてしまう。値段的にも、クラウドソーシングに世間相場が引っぱられるんだから大差ない。
知識やスキルがあるのに、クラウドソーシングを使うのは、多くの案が欲しいというケースで、なおかつ対面のコミュニケーションスキルが低い場合だけなんじゃないだろうか。直接話をしたり、連絡先できないと、ここはどうなってるのとか、追加でやって欲しいんだけど、みたいなことができない。お金の発生しないような、やりとりがね。
このことを逆に仕事を受ける側からみれば、どれだけやっても信頼関係が結べない可能性が高い。いやいや、双方の納品後の評価というのがあるでしょ。と言う人がいるかもしれない。じゃあ聞きたいけど、そのプラットフォームが何年保つんだろう。儲からなければあっという間に閉鎖するし、儲かれば売り飛ばすかもしれない。そういうビジネスなんじゃないだろうか。
だぶん評価・評判ということなら、ヤフオクの方が何十倍も意味あるかもね。
評価を意味あるものにするなら、クラウドソーシングで仕事するのと同時に、最低限、自前でウェブサイトなどを作って、仕事の実績をまとめてアピールするのがいいかもしれない。
仕事していれば、クラウドでの評判よりも、実際に顔を合わせた仕事した人からの評価の方が、圧倒的に励みになるはず。
デフレを脱却して、インフレにシフトするのか
こう考えてくると、どう考えたって日本の賃金もフリーランスのギャランティは低下する一方だ。上がるのは、プラットフォームを運営しているところと、輸出企業の賃金だけ。
じゃあ物価は下がるの上がるのと考えれば、電気料金などインフラに関する料金は上がる。税金や年金なども、当然上がって行く。
そして東京オリンピックが終わるまでは、家賃など住宅費用も上がり続ける。
そんな生活の基盤になる費用が上がり続ける中で、クラウドソーシングという、ギャランティが下がって行く最先端の仕組みのひとつに依存して生きていくのは、どう考えたってムチャな話だ。
もし、クラウドソーシングをメインに仕事して行こうとするなら、東京や大阪などの都市部で暮らさないこと。
クラウドソーシングを使うメリットは、余計なコミュニケーションを排除できること。それは仕事の範囲が契約で明確だし、ネット上で完結できるから。
ネットで完結できるということは、都市部にいなくたっていいし、極端な話、日本にいなくたっていい。いや、極端じゃなくて、そうでもしないと収入と支出のバランスが取れないだろうしね。
そういうことを言わない大人は、ただのウソつきなのよ。ホントに。だいたいね、薦めてるのは、律儀に契約を守りそうな人たちじゃないじゃん。
今日のBGM-324【 花咲く乙女よ穴をほれ - ムーンライダーズ 】