AVの仕事が奴隷に近いかどうかは知らないけど、構造は一般的な仕事とそう変わらないのかも
ひょんなことから、アメリカの大学で文化人類学的なジャンルを教えている先生から質問を受けた。テーマは、日本での仕事/労働環境の変化について。
私は詳しいっちゃ、詳しい。部分的に。
私の持論である、伝統的な日本企業と外資の悪いとこ取りについて話した。ほとんどの大手企業にアメリカだけじゃなく、さまざまな外国企業や投資会社の資本が入り、日本での仕事がどうなってきたか。
アメリカ企業的なドライさ。極端な話、たとえ半期のような短い期間でも目標が達成されなければ、犯人探しが行われて、上級職でも降格させられたり、解雇されたりする。一般職や、外注先の中小企業との関係だってドラスチックに変化する。
一方で完全な外資企業でも、動いている大多数は日本人。雇用時に◯◯職と明記されていても、社員ならこんなことぐらいやって当然でしょう、みたいな要求は当たり前のようにある。欧米なら許されないようなことだけど、契約にもとづいて働く、雇用するという概念が染み付いていないのだから、当然だ。
外注先にも同じことが起こる。この部品、10000個を納品したらいくらかをコンペする。最安値のところが落札するけれども、後から1個1個、こういう箱に入れて納品しろ。運送業者ではなく、営業が届けて、こちらと一緒に検品しろとかいう要求。
いやいや、それだと見積もり価格が変わると要求しても「価格の変更は認められない」と突っぱねられる。
欧米式だと違法とされるような取引がまかり通る。
それを「おもてなしの精神」だとかいう人もいる。信頼関係もなく、契約も意味がない。その大変さで言えば、悪いとこ取り。
どちらも価格というところで言えば、最安値。そして日本では、過剰な対応が要求される。作業する人、現場で働くワーカーではなく、もっと偉い人は、コストをカットすることが、評価されやすい仕事になる。
コストカットに秀でた人が出世するから、何が市場でウケるのか、評価されるのかなんてことには詳しくない。
商品価格も安ければ消費者は買う。従業員は安く、できるだけ少人数にすれば固定費は下がる。1人ひとりの役割を限界まで増やせば、人件費は劇的に安くなる。下ぶれした価格の中でも、コストを削減しておけば、リスクは少なく、利益を確保できる可能性が高い。かくして管理者は、限界をめざす。
だから労働環境としては、最悪になる。
子供が小さいなどで週の半分も働けないパートタイマーだって、歓送迎会とか忘年会新年会、暑気払いだとかで拘束されたりする。和の精神とかチームで頑張ろうとか、日本の美徳みたいに言われるけど、実態は人間関係で縛りたい。
アルバイトパートで成り立つ業態の人の出入りは、昔に比べると圧倒的に増えているから、いちいち歓送迎会なんてしていたら、なんのために働いているのか分からないほどの出費になる。
そんな話をした。
すると唐突にAV女優が奴隷のように扱われているのを知っているか、と尋ねられた。
なんですって、AV。奴隷!?
いやいや知らない知らない。逆に、そうなんですかと、聞き返した。
生命の危険あるほどの現場、違法な契約内容、辞めるというと違約金を要求される、などなど。
うーん、それが本当なのかどうか、知る由もないけど、あってもぜんぜん不思議じゃない。
そもそも売春なのに、摘発されないのは警察が黙認しているんだろうか。黙認されてるなら、他の違法性も事件化しないと取り締まりされる可能性は低いのかも。
日本は先進国で唯一、人身売買関与国ワースト10に入るというじゃないですか。農業研修生とか技能研修生という名の奴隷制。日本で働けると海外から連れて来て、パスポートを取り上げて性風俗で働かされるとか、昔から、ずっとある。風俗は暴力団が関与しているだろうから、警察の怠慢。
だけど研修生制度は国がやっていて、農家だったり工場だったり、暴力組織ではない一般人たちがやっている。いわば国策による黙認ということ。
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ちなみにこのところ言われている奴隷契約とは、こういうこと。
ローラが所属事務所と結んでいるのは奴隷契約と言われる。確かに選択の自由がないんだから、扱いはともかくひどい話だ。
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研修生たちは、よくわからないまま海外から来てパスポート取り上げられたら、そうなるわ。おもてなしとか和の精神とかが通用しない、そして訴える手段を持たない外国人には、奴隷に近い扱いをしそうだ。
ひどい話だけど、日本人が日本で働く環境だって、和の精神とか協調性とかいう契約外の物語で縛ってるわけだから。
共感性のないサイコパスでも、そういう物語は間違いなく使うだろう。日本だけの特殊性なのかもしれない。
AV女優がまともな契約なんてない状態で働かされてたり、現場で事前の話とはちがうことを要求されても「みんなに迷惑をかける」「争いたくない嫌われたくない」とかいう物語に自分から縛られに行ってる可能性は高い。
普通にさまざまリスクが考えられるのに、それを飛び越えてAVに行ってしまう人は精神的に病んでいる可能性が高いんじゃないか。だから「みんなに迷惑をかける」「争いたくない嫌われたくない」と人一倍感じてしまうんじゃないだろうか。
そんな風に返答した。
とにかく、いつからか人間がリソース化された。そしてAIやロボットなど自動化・仕組み化できてる仕事以外は、人間が取引される商品そのものになった。工事現場だろうがなんだろうが、人じゃなきゃやれないところはいくらでもある。ビルやマンション工事があちこちで増えれば、職人は取引される商品。
コスト削減のテーマは、モノの価格が最安値になれば、人の価格に行くのが当たり前。その結果、給料や時給を下げられなくなれば、1人ひとりの仕事量や仕事の範囲を広げさせようとする。
AVの世界なら、ひとりの女優の仕事量や仕事の範囲を広げさせようとするんだから、無茶なことをさせる方向に向かう。
誰が悪いのかって?
そりゃあ使うことだけをしてる人たちだわ。共感性のないサイコパスが経営者に増えれば、そうなるのが当たり前。
その先生は「人権意識がないんだろうか」とおっしゃったんだけど、サイコパスが他人の人権なんて気にしますか? 最優先は投資効率なんだから、働く人は人間じゃないんですって。
投資効率を追求したら、何が起こってくるか。
ダイバーシティとかLGBTとか言われて人権意識が高まってるように思えるけど、多様性とかマイノリティが重視されてるわけじゃなくて、国籍だって人種だって、なんだってOK。多様性でもなんでも認めてやるから、働け、生産性を高めろということですって。
ああ、なんて暗いこと書いたんだろ(笑)
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