不透明なチカラですが、なにか?

テーマはいろいろ。というか絞れません。2013年7月以前は他のブログサービスからインポートしたので、リンクや画像等がなくなってるかもしれません。

デヴィッド・ボウイが教えてくれたこと

デヴィッド・ボウイ10年ぶりの新譜が出るというプロモーションは、発売前から大々的に行われてた。ネット上のことだから、さほどの金額ではないかもしれないけど、レコード会社は入れ込んでるなぁという印象。
私はどれぐらいのファンかというと、そりゃあもう、このブログで[今日のBGM]として出している曲は、圧倒的にボウイのものが多いはず。
グラムロックと呼ばれた頃はリアルタイムでは知らないけど、とても好きだ。バロウズオーウェルに影響されてたろり、ソウルミュージックに傾倒してる頃もいい。リアルタイムで聴いてたベルリン三部作は、めちゃくちゃ好きだ。レットダンス以降のコアファンが嫌うロックスター、ポップスターの時期も好きだ。でもティン・マシーンからは… 消滅後も二枚ほど買ったけど、もういいかなというのが正直な感想。

今回の『The Next Day』は、事前に公開されている2本のPVを観ても、「The Stars (Are Out Tonight)」はなかなかソソラレルというか、けっこう期待させるものがある。サウンドもだけど、いったい何をメッセージしたい?

そして何より、このジャケット。これって『HEROS』のまんま使ってる!? どういうこっちゃ。
この記事を書くのに、「よーし、“HEROS”のLPと“The Next Day”のCDを並べて撮ってやる!」と意気込んで、LPを必死こいて探したんだけど、なかった。もしかしたら、誰かに貸してそのままか、あげちゃったのかもしれない。他のベルリン三部作はCDで買いなおしたんだけど、『HEROS』はCDで買ってない。ファンと言いながら、そんなもんだ(笑)

『The Next Day』を開いて撮りました。
THE NEXT DAYを開いて

こっちが、『HEROS』のジャケット
img_335364_10945310_4.jpg


このアートワークを手がけた、ジョナサン・バーンブルックという人のブログに意図が書いてあるそうです。
それを紹介しているブログがあったので、リンクしておきます。

HIGH-HOPES管理人のひとりごと(洋楽ロック)
勝手に抜粋すると、
----------------------------------------
『HEROES』のカヴァーを白い四角で覆い隠すこのデザインは、過去を忘れたり消し去ったりした「現在の」偉大なポップスやロック・ミュージックの精神を意味している。
しかし、過去から完全に決別することが不可能なことは誰もが知っている。クリエイティヴな者の才能はあらゆる形で現れ、何か新しい足跡を残すたびににじみ出てくるものなのだ(特にボウイのようなアーティストの場合は)。自分がどれだけ過去から逃げようとしても、他人には自分の歴史と関連付けて評価される。また、より広い意味での人間の状態も表している。私たちは絶えず過去を置き去りにし、次の日に向かって生きている。それはそれ以外に選択肢がないからだ。
----------------------------------------
くぅ〜、深い! ベルリンの壁が崩落する前と今のベルリンを比較しているらしいけど、そんなことより、上の抜粋が深過ぎてたまらん。

先日、テレビで郷ひろみの若さの秘密みたいなことをやっていて、ジムでのトレーニング風景を写していた。そんなのはどうってことないけど、私がビックリしたのはジムの中でファンにサインを求められて、気軽に応じてるし、記念撮影にも入ってあげてたこと。いわばスッピン状態なのに、この人、ファンに求められるのが、うれしいんだ。
ジャニーズのアイドルなんかでも高級でも一般のジムに行ってる人はいるけど、普通は人のいない時間帯にいくらしい。だいたいは、個人レッスンでしょう。

引退したアイドルとかつて家が近くて、奥さんが親しかったけど、その人は公園でも顔を隠してた。またモデルでサブカル系の人も、表舞台から消えてからは一般人化しようとされてたけど、なかなか大変そうだ。スポーツ選手なども大変だろうけど、アーティスト的な人たちは、単に目だつ、外見が注目されるというだけじゃないから大変だ。


デヴィッド・ボウイは、常に変化して来た。ケバケバしい化粧をしてたグラムロック、バイセクシャルイメージの時代からベルリン三部作までは、少なくとも外見やファッションだけじゃなく、サウンド、表現手法、コンセプト、メッセージからなにから、存在のすべてが注目をされていた。トレンドに乗るとか、そういう感じじゃない。イーノと組んだベルリン三部作は、時代的にパンク、ニューウェーブ全盛というか、そこを無視した表現はイケテナイない選択だったはず。それなのに小難しくて、ノイズっぽくて沈鬱なサウンド。イーノは孤高の人だから当たり前だけど、ボウイはすでにロックスターだからね。

David Bowie - Heroes


私はデヴィッド・ボウイから、ものすごく影響を受けた。音楽だけじゃなく、例えばビートジェネレーションとかビート詩人というようなジャンルなんていうのも、もしかしたらボウイがいなかったら、いまだに知らなかったかも。地球に落ちて来た男や1984やビックブラザーなんていう知識や発想やコンセプトも、まずボウイを通じて知った。

私のような人は、世界中に山ほどいると思う。

グラムロック時代から好きだった人は、アメリカンソウルへの傾倒で裏切られる。ピンナップスというカバーアルバムで、カルトヒーローとして崇めてた人たちは裏切られ。ベルリン三部作の沈鬱さで裏切られたものの、それによって世界的なロックスター、カルチャーヒーロー化したので、また裏切られ。Let's Danceでポップスター化したので激怒し(笑) みたいな、裏切りの歴史がある。本人は一箇所に留まらないパッセンジャー、ロジャーみたいに思ってるところが、私にとってはカッコ良かった。

同じヒーローズでも、後年はまるで郷ひろみのように歌ってる(笑)
David Bowie - Heroes (live)


その後バンド回帰みたいなことで、ティン・マシーンを結成したけど、そんなのうまく行くはずがない。ストーンズみたいに、同じことを同じように何十年もやってきた分厚さとか凄みには、到底及ぶはずもない。

ストーンズが「夜をぶっ飛ばせ」を出したのはいつ? と思って調べたら、1967年だって。
それからず〜っと同じアレンジで、おんなじように演奏してるのね。たぶん、上手くもなってない(笑)
The Rolling Stones - Let's Spend The Night Together (Live) - OFFICIAL


ボウイは1973年に「夜をぶっ飛ばせ」をカバー。この時代に、こんな先鋭的なサウンドを作ってる。
David Bowie - Lets Spend The Night Together


ボウイは新しいというより、異質なものを常に作って来た。たぶん裏切るとかいうことじゃなくて、今あるものは退屈だ。だから退屈じゃないものを作りたい衝動に駆られる。でもカルトスターから、ポップスターになれば、周囲の状況やファンが「売れること」を強要してくる。いや売れるだけじゃなくて、刺激的なスタイルもそれなりに求めて。もちろん本人も、自意識過剰になる。
でももう刺激的なものは作れない。となったのが、たぶんティン・マシーンの頃。


1997年に『Heroes Symphony』というアルバムが出た。ブライアン・イーノフィリップ・グラスデビッド・ボウイの三人の顔がジャケットになってる。この三人とも好きなのに、正直ちょっと退屈だった。おまけで付いていた小さなCDに入っているAphex Twinのリミックスが、最も面白かったというか、買いだった。

その時のことかどうかはわからないけど、Aphex Twinことリチャード・D・ジェームスがインタビューで「デヴィッド・ボウイから一緒に仕事をしないかと持ちかけられたけど、若い才能を取り込みたいというのがミエミエだったから断った」的なことを語ってた。それを読んで、うわぁ〜、悪意のある言い方だわと思った。ボウイが当時、キラ星のような才能を持つリチャード・D・ジェームスを取り込みたいというより、コラボして、新しい音楽を作りたいと思っていたんだろう。だけど、こんな風に言われてしまう。


10年ぶりに出した『The Next Day』のテーマは、たぶん老いだ。Amazonのレビューを読むと、ファンの評価はめちゃくちゃ高い。のちに名盤だと言われるだろうという意見もある。でも私は、買わなきゃ良かったなぁという感想。私はデヴィッド・ボウイのなによりの魅力は、ボーカリストとしての才能。声質も歌い方も、とても好きだ。こんな独特な人、他にはいないと思う。でも今回のアルバムでは、老いなのか、何かしらのトラブルなのか、魅力が半減なんてもんじゃない。
アルバムの中で唯一好きな「The Stars (Are Out Tonight)」にしても、かつてのボウイが歌ったらもっと魅力的だろうなと思ってしまう。

サウンドにしても、今までにやってきたことが取り入れられているだけで、目新しくはない。ファンの勝手な期待だけど。
でも聴いてると、ああ、もう刺激とか退屈とか、そういうことじゃないんだなと思えて来た。歌詞も、たぶん老いて何が悪いと言っているように思える。そりゃあ、そうだ。ファンの期待がどうあれ、出したいものを出す。そう言っているように思える。
考えてみれば、一時期は郷ひろみのようになっていたんだから、渋くフランク・シナトラみたいになっていく方向もあったかもしれない。だけどそんな風にはならず、サウンドは十分に変態的だ。老いても、そのままで、好きに行くんだなボウイは。スターの、老いの方法論としては画期的かもしれない。




The Next Day [Deluxe Edition, Import]/ デビッド・ボウイ


今日のBGM-247【 David Bowie - Golden Years 】

テレビ番組「Soul Train」に出た時のもの。もちろんリアルタイムでは見てないけど、ソウルに傾倒している時代の曲も素晴らしい。