数字でウソをつく方法
昨日、帰ってきてテレビをつけたら、ワールドビジネスサテライトをやってた。電力料金が10%上がったら20%上がったら、GDPがこういう風になるというのを、表を使ってゲストが解説してた。
で、最後にゲストは「国民は、原発が再稼動しないと、こういうことになるということを覚悟しないと」みたいな意味のことを言ってた。私は、アホらしと思って、着替えたりしながらだし、まともに見なかった。原発が止まってる。火力発電にすると燃料コストがかさむ。電気料金を値上げする。企業収益が悪化して、GDPが下がるという理屈。
この話の中に、どれだけ意図的なウソが隠されてるか。地元を買収するコスト、落とし続けるコストはブラックボックス。しかも福島原発の事故に関する賠償金等は、原発のコストに含めないのか。今後、環境問題など、原発を維持することで、必要になるコストは増大するんじゃないの?
いやそういう支出も、GDPに含まれますよ。え、そうなの? じゃあ、企業収益が悪化しても、電力会社は儲かるからいいんじゃないの? いや、原油を輸入するために海外に支払うお金が増えるだけです。GDPは、日本国内の儲けの総額ですから、儲けは下がるんです。
GDPの構成要素は、個人消費+企業投資+政府支出+輸出−輸入だからね。国内で金を使い続ける分には、GDPは上がります。電力は生みだせば生みだすほど、GDPは増えるんです。へ? ってことはGDPが上がったから、いい。GDPが下がったから、ダメだ。なんてことはなくて、ほとんど関係ないんじゃない。経済の規模を表す指標なだけで。
私のつたない知識で合ってるのかどうか分からないけど、昨日のワールドビジネスサテライトでゲストが言ってたことは、単に広く脅してるだけで、企業収益が悪化するのは間違いない。だけど電気料金の値上げと、原発停止にどれだけの相関関係があるのか、誰も語ってない。そもそも今までの日本の電力料金が、こんなに高いのは、なぜか。そこをブラックボックスにしておいて、原発停止とGDPを結びつけることに、何か意味があるのか。
さらにはGDPが下がったから、なにがマズいの? って聞いたら、ちゃんと答えてくれる経済学者やエコノミストはいるんだろうか。
私が27歳ぐらいの時かな。勤めてる会社で、大きな組織改変のためというか、いくつかある本部を統合するための戦略を作る部署が出来て、私も引っ張られた。専務1名、常務1名、取締役1名、部長5名、課長2名、平社員2名で、私が係長でひとりという、冗談みたいな部署。部署のミッションは、中期経営計画の策定と、それにもとづく組織の改編案作成。それが終われば解散する。役員や部長は、それぞれの本部や部を背負ってる。課長以下5名は、共有の小間使いみたいなもので。それがひとつの部屋にいて、毎日朝から晩まで、打ち合わせとか会議ばっかり。というか、打ち合わせと会議の区別はない。全部、まる聞こえなんだから。
で、ある時、コンサル出身の経営企画の部長が、前提となる市場規模予測を出した。内容は、GDPが2%成長で当該市場は、これこれの規模。3%で、4%で、5%でという内容。私は笑いそうになって、「それで、何%の成長率だという見通なんでしょうか」とお聞きしてみた。
すると「それは分からない」と。要するに、何にも分からないということだ(笑) 提案でもないし。
もちろん市場規模は大事ですけど、最大の問題はシェアで。何をするかでシェアの見込みも変わってくる。何をするかを考えませんか、みたいなことを怖いもの知らずで言っちゃって。役員部長は皆睨みあいで何も出来ず、結局私が全部ひとりで中期計画を書いた。冗談みたいな話だけど、実話(笑) 何をするかがないと、責任を取らない無責任な評論家。
電気料金が上がることを前提条件にしたって、なんの意味もない。今のコスト構造を変えずに、値上げする。値上げを前提に、国民に覚悟を、ってところがバカ。つまりは電力会社もグループ会社も、霞ヶ関や天下りも何にも変えないことを既成事実にしちゃってるんだから。バカじゃなければ、意図的なものを感じる。
数字を使って、図で見せられると、賢そうで一目瞭然でしょ、みたいな圧力と説得力があるけど、何をするかを、まったく考えてない。
電気が止まって、熱中症で死んじゃう老人がいる。そりゃ大変だ。じゃあ、原発ができる以前はどうだったんだろう。熱中症で死なないように、ふんだんに電力が必要だ。それには原発が不可欠だ? 誰か、どれぐらいふんだんに必要かを検証したのか。生活苦で料金支払えなくても、電気は止められるぞ。ひとたび原発事故が起これば、健康被害がどれだけの人数に起こるんだろう。計画停電があり、熱中症で死ぬ人の数と、原発事故による健康被害と世界的な汚染のどちらをとるか。覚悟をって言うなら、そっちだ。どっちにしろ極端な二択は意味なくて、国民のためには、程度を考えるための根拠を国かマスメディアが調べて教えてくれることが必要だけど。でも、どっちも信用できない(笑)
日本はカロリーベースで、食料自給率が40数%だという。それって食べ過ぎってことはないの? 食べ過ぎで捨て過ぎだから、自給率が低くなってるとか。それとも厚労省の定めた適切なカロリーで年齢別の人口と掛け合わせて、出した数字を総カロリーとして出してる? 戦争とかになって輸入が止まって、適正カロリーだと足りない人が、ひもじいと言ったって、誰も同情しないでしょう。最低限のカロリーは確保されてるんだから、ガマンしろって言われるのがオチ。電力は、そういうのと一緒か、一緒じゃないのか。
管さんは、破綻したらIMFの管理になって、箸の上げ下ろしにまで注文をつけられますよ。だから消費税をあげましょうと。IMFが箸の上げ下ろしに注文つけても、私は何にも困らないです(笑) だって、韓国はIMF管理になって、強くなったじゃん。政治家とか官僚とか、今の体制で得してる人たちが困るだけでしょ。貧富の拡大とか、負の面もあるけど、今の日本だってこれだけ自殺する人がいるんだから大差ない。
野田さんは、消費税増税に政治生命をかけると言ってる。命をかけるんなら、まだ理解できるけどね(笑) 財政再建に政治生命をかけるとは言ってないのよ。要するに増税はするけど、予算の削減はしないっていう意味よ。国家予算を削減したら、GDPがマイナスになっちゃうから。だから今まで通りダダ漏れさせるけど、それは増税でまかなうよと宣言してるのと一緒。社会保障を破綻させないためだと言ってるけど、消費税を10%にしたら、15%にしたら大丈夫なのか。まともな人なら、入るのを限りなく引き上げるより、出す方を早めに抑制すれば、増税幅を少なくできると考えないだろうか。その方が、平等で健全な社会なんじゃない。自分が支払った何倍もの金額が、受け取れるという仕組みが異常。数字を出されると、それでなんとかなりそうな気がするけど、根拠なんてどこにも出されてないし、それをマスメディアは指摘も計算もしない。
だって自公が「100年安心」な年金と言ってたのは、2004年。それがもう去年の末には、支給を65歳にするとか70歳にするとか言い出した。100年安心がウソなのはもちろん、消費税をどれだけ上げたところで、まともに出すのは団塊の世代まで。団塊の世代の大半が死ねば、正常化できるという戦略。薬害とか戦後賠償とか、日本の戦略は、ずっーと一緒。そのうち、そいつらが死ねば、問題がなくなる作戦。それまでは、ダマして引っ張る。
もっと以前からだけど、3.11後は一般人も専門家も、極端な意見が多い。専門家が正しいかと言えば、それらはみんな前提があっての話だ。日本の建築業界も建築基準法も、地震は考えてても、津波はまったく考慮してないそうだ。考慮してないって、歴史上、3.11程度の津波はあったというのに。法律で想定してないんだから、建築業界は責任ないって言うだろう。なんで前提にしてない?
津波じゃないけど、浦安の液状化集団訴訟。分譲した三井不動産は「大震災は予測できず、そもそも液状化を防ぐための地盤改良工事を行う義務はなかった」と反論してるそう。どっちの言い分が正しいとは言えないけど、少なくても法律で決まってないんだから、責任はないという主張は法的には正論。買う側は、売る側はそういう理屈だってこと分かってないと。そういえば「三井に、住んでいます。」というブランド広告は、このところやらなくなったしね(笑)
じゃあ、想定すれば大丈夫なのか。いやいや、そんなことしたら日本の建築業が成り立たず、経済が悪化する。経済が悪化すると、GDPがマイナス成長になって、日本は大変なことになるぞ。どう大変になるんでしょうか? それはその、常識だ。勉強しろ! って言われるのがオチだろう(笑) でも、ちゃんと説明してくれる人は、どこかにいるんだろうか。
数年前、確か武富士が香港に子会社を設立。その役員に会長の息子が就いて、段階的に出世して代表取締役に。詳しいことは知らないけど、この過程で会長から、息子に贈与があった。贈与税は日本で支払うべきだと、税務当局が摘発。最高裁まで争って、国が負けた。その結果、還付金が2000億だとか。真相がどうのじゃなくて、こういう場合、結局海外での所得ということになったんだから、GDPには入らない? でも日本国民だから、GNPには入るの?
こんなことさ企業だって、タックスヘイブンに金流して似たようなことやってるし、金持ちだってやってるし、たぶん坂本龍一だって、そういうことでしょう。そんなことがいくらでもあるのに、GNPならともかく、GDPの成長率って、いったいどんな意味があって、誰のためなんだろう。
投資顧問会社AIJが、2000億の損失出したという。武富士会長の息子に返した金額と、ほぼ同じというところが面白いけど(笑)
これでヤバくなる厚生年金基金が、いくつもあるという。加入企業が負担して、潰れるんじゃないかと言われてたり。それだけじゃなくて通常の厚生年金も運用してて穴をあけたから、結局国民が税金で負担することになるということで、大騒ぎ。は? なんで国民が負担?
加入してる年金基金のほとんどは、5.5%という高利回りを想定しているという。それって、経営陣が「大変キビシい社会状況ですが、ここはひとつ、売上前年比10%増の予算で」と言う机上の空論と一緒だ。なんの根拠もない。
AIJの社長は、ずっとウソの運用報告をしてた。新しい年金基金の扱いを獲得することで、自転車操業をしてたのが、ついににっちもさっちも行かなくなった。虚偽の運用報告を続けてたということであれば、金融庁や厚労省の責任もだけど、粉飾決算。国税庁が摘発しなかった責任もあるんじゃないの。そこは官僚OB人脈と、利益共同体として、つながってたからか? 摘発されないなら、どんな数字をでっち上げるのも可能だ。
だいたい投資を扱う会社は、自分のところは手堅いから大丈夫だという。だけど世界的な金融危機の引き金になった、サブプライム問題。それはリーマンショックを引き起こし、世界的な損失が1500兆円だとかどうとか。さらにはギリシャ危機、ユーロ危機にまでつながっていると言われる。そんなスケールのでかい話、私には理解できないけど、サブプライムは家を買えるような所得じゃない人に、ローンを組ませるというそもそも無謀な行為。いやいや値上がりするから大丈夫なんですよ。しかも頭の悪い人には理解できない金融工学でリスクを限りなく低減してますからね、大丈夫ですよ、と言ってた。しかし、現実はこういうことで。これも格付け会社が、投資適格と判断してお墨付きを与えたというインチキなのか、ヤラセなのか、詐欺なのか、分からない状況。
特に重要なのは、デリバティブの理論でノーベル経済学賞を受賞したハーバードとスタンフォードのふたりの大学教授が始めたファンドの破綻。これが世界恐慌を引き起こしかねなかったけど、アメリカは関連金融機関に何千億ドルもの資金援助をしたので、連鎖はなんとか免れた。ということは、ノーベル賞自体が、インチキなのか、ヤラセなのか、詐欺なのか?
いやいやこれも、数学的には正しいんだそうだ(笑) 私の頭では到底理解できない複雑な話だろうけど、学問的には正しいんだと。だけど現実に適応するには、前提条件の詰めが甘かった。歴史認識が、ゆるかった。モラルが、欠如してた。監視が、なかった。みたいなことらしい。理解できる? 研究室で遊んでろよ、お前らって感じでしょ(笑)
つまり、どういう専門家も、あまりに現実に対応してないのよ。俯瞰的に考える、トータルに考えてる人がどれだけいるだろうか。専門外です、想定外ですと逃げられるなら、少なくとも公的な役職に就けるべきじゃない。
数字は、デッチ上げられる。デッチ上げじゃなくても、前提が足りない。かなり生暖かい目で見ても専門家は、専門分野だけの、過去のことならそれなりに詳しい。でも法律で求められてないこととか、見たくないことは見ない。現実に対応というより、適応してないと言った方がいいかもね。悪く言えば、自分のポジションに都合のいい前提だけを使ってる。ノーベル賞受賞者だって、そんな程度だってことを理解しないと。
じゃあ、何を信用すればいいんだよ? え、信用? そんなの、誰のことも信用するなよ(笑)
【にほんブログ村】に参加しています。
↓面白かったり、役に立ったら、ポチっとね。
今回、ある人のブログに、真面目なことも書いてみますってコメントしちゃったから、こういうトーンになっちゃったんだけど、こんな難しいこと書いたら自分の無知っぷりをさらすようでコワい(笑)
でも無知でもいいんだわ。専門家だって、んなの大したことないんだから(笑)
今日のBGM-133【 BEATNIKS - No Way Out 】
いや、この内容で出口なしってマズいけど、思い浮かんじゃったから、しょうがない。
出口は、ありますよ。出口を抑えれば、いいだけよ。個人は欲張らず、ダマされないようにすれば、なんとでもなるさ。