10年後、スーツ着て仕事してる人なんていないかもしれないのに
このところ、スーツネタに関するバッシングが二つあった。
ひとつは、就職四季報プラスワンの編集長が東洋経済ONLINEに書いた『リクルートスーツは、「黒系」を選べ! 服装で目立とうとしてはいけない』という記事に対するもの。
そしてもうひとつは、PRESIDENT の1月号に掲載された記事が11月に入ってPRESIDENTONLINEに転載されたんだと思う。富裕層向けのパーソナルスタイリングサービスを手がける会社の代表者が書いた『課長、部長になったらいくらのスーツを着るべきか』に対するもの。
このふたつに対して、ネット上では、ほとんどバッシングのような論評ばかりのように思える。そんなにスーツに興味のある人が多いんだ、と私はビックリ。
だけどさ、スーツどうのこうのって言ったって、たぶんもう衰退産業よ。矢野経済研究所によると1990年、つまりバブル末期に13兆円あった市場規模は、20年で3割ほど減少。その後も3.11直後は買い控えの対象だし、今だってユニクロや紳士服専門店なんかでデフレが顕著なジャンルじゃないのかなと思う。
着こなしどうのこうのと言ったって、どんどんオフィスのカジュアル化が進んでるのに、カジュアルな着こなしに悩む人は多くたって、スーツにどれほどの関心があるんだろう。
私は今までリクルートスーツやスーツに関する仕事をけっこうやったけど、実は売る側はそんなにコダワリないはず。いわばなんとなく、時代の空気に合わせてるだけなのよね。
そんな私がスーツに関して思ってることを、いくつか書いてみます。
黒いスーツは値段が分かりづらいし、長く着られる。
東洋経済ONLINEの記事は、要するに就職活動で個性的であることを否定しているのが気に食わない人が大勢いるってことね。でも黒いスーツって、モード系で使われることが多い色なんだけど、そこはどうなんでしょうね(笑)
アクセントになる刺し色的な色のソックスやネクタイを絞めたら、強烈な個性になるし、組み合わせ次第でどうにでもなる。
それ以上に、紺やグレーのスーツに比べて高いかどうか分かりづらい色だってことも重要かも。黒い生地が高いかどうか見分けつく人って、たぶんアパレル業界でもスーツ扱ってるような人だけよ。紺やグレーなら、一般のおばちゃんでもチェックしてたりする。
もちろん汚れが目立ちやすいとか、そういう問題はあるけど、清潔でシワが目立たないのは、個性的か個性的じゃないか、地位にふさわしいかどうか以前の問題だわ。
それから黒は形、微妙なラインの流行に左右されにくいというか、分かりづらいというところもメリットかも。
業界ごとの流行のスタイルなんて、個性でもなんでもない
そう、黒はコーディネートで変化する幅が広い。個性的にしようとすれば、いくらでもできる。
何年も前からコンパクトに小さなスーツ、お尻の形が見えるようなデザインがトレンドだと思うけど、それは業界が限られる。金融系で、そんなデザインのものを着ている人はまずいない。
細身のスーツで、尖ったレザーシューズ。そしてトートバックを持ってる営業マンとなると、特定業種の制服みたいなもんだ。年配の人が見たら眉をひそめそうだけど、でもほとんどの場合は大丈夫。タブレット出して説明すれば今どきは、そうなんだろう、そういうもんなんだろうと思ってくれるようですよ。若手なら黒紺グレーにストライプだろうが、どんなスタイルだってまず許容される。今は、そういう時代でしょう。
個性って、一部の人がギョッとするようなのじゃなきゃ、逆に誰からも個性的だとも思ってもらえない。スーツに関する話題は、そんな振り幅の狭いなかで、どうのこうのと言ってるみたいよね。
この先、スーツ着て仕事する人がどんどん減ると思うのは
お役所ってたいがいエラい人以外は、スーツじゃない。国家公務員だって、クールビズだとアロハだっていいってなってるぐらいで、カタい職業もカジュアル化が進行してる。
じゃあスーツ着てしなきゃいけない仕事って、なに? 多くの業種で営業マンはスーツ着なきゃいけないってルールになってるだろう。そういう人は、実績さえ出してれば、少々個性的に振れたって平気なんじゃないの。
業務請負で出向してたり、客先で作業するSEなんかは、これからもスーツかもしれない。だけどそれ以外の職業だと、おカタいところ以外、あまり想像できない。
それから私が思うのは、スーツ専門店や百貨店の平場それにハイブランド以外では、スーツを売っているようなショップでも販売をしている人たちが、スーツスタイルじゃないってこと。
ショップの店員さんたちは、動くマネキンだから客単価の高いスーツを着てたって良さそうなもんだ。だけど着ていないってことは、スーツの売上がぜんぜん大したことないか、それともイケてるショップだと思われないってことなんじゃないだろうか。
その両方かもしれないけど、後者は確実にある。そりゃあスーツは誰が着たって、それなりになる。だって基本は制服なんだから、論争になるようなテーマじゃないと思うんだけどな。
スーツが地位をあらわすと考えなきゃいけないようなポジションは?
『課長、部長になったらいくらのスーツを着るべきか』に書いてあることで、まず驚いたのは、「洗えるスーツは問題外」ですという小見出し。そして、ここ。
中間管理職・部長は10万~25万、経営者・役員クラスは25万~が目安です。
ただし、高価格スーツは高品質の生地を使っているのでメンテナンスが大切。繊細な素材が使われていますから、移動が多いなどヘビーに動く職種の方は高価格スーツでないほうがかえっていい場合も多いでしょう。そこはケースバイケースでお選びいただくのが賢明です。
「ヘビーに動く職種の方は高価格スーツでないほうがかえっていい場合も」と書くなら、何のために役職と値段を対応させているんでしょう(笑)
高品質の生地、繊細な素材と書いているのは、分かりやすく言いなおすと細い糸を使ってるということ。だから移動がなくたって、毎日同じスーツやシャツを着てるなんてことは想定外なんです。頻繁に着ていると、擦り切れやすいという意味だと考えていいでしょう。それはつまり、ワーカーではありませんという宣言ってことです。はぁ(笑)
もっと理解しやすくいうと、かなりデコラティブなネイルをしてる、それなりの年齢の女性って周囲にいませんか? あれは家事してません、しません。セレブでしょうと言っているのと同じなんです。この場合は主に女性に向けての宣言ですけど。
先日、仕事である学校法人のNo2の方とお会いしました。一見して、もうビックリ。たぶんグッチだろうなと思える、アピールしまくりのスーツでした。出張で3日連続で着たら、擦り切れそうです(笑)
私はもう、その印象の段階で信用しません。この人きっと、書類も作りません。パソコンで打ち込んだりもしません。下々が持ってくるものを見て、読んで判断するだけです。って感じなんだろうなと判断しました。結果、その通りでした(笑)
物腰は柔らかいのに、人となりを服装が饒舌に語ってる。めったにいませんけど、これならヨレヨレのスーツの人の方が、私はまだ信用しますね。
カジュアル化の波は、職位のフラット化と共時的に進行しそう
行政や政治と密接に絡んでいるような業種以外では、年功序列も、管理だけする人もどんどん消えていく社会なのは間違いないでしょう。現場仕事しません、できませんという人が、どれほどの人数必要でしょう。
たぶんスーツが職位をあらわすなんて発想は、過去の遺物。あれだけ強権的に見えるユニクロの社長だって、ユニクロのカジュアルを着こなしてる。カジュアルが似合うってことは、それだけ世間音痴じゃない。街を歩いてるってことを意味していると私は思うんですが。
今日のBGM-363【 WORLD ORDER - CHANGE YOUR LIFE 】
いやあの、こういうカジュアル化じゃなくて(笑)
WORLD ORDERのスタイルって、やっぱり制服着てる人がっていう面白さが、まずありますよね。WORLD ORDERの記事を書いたばっかりなのに、また(笑)